「完璧な湯切りは存在しない」 村上春樹風カップ焼きそばの「作り方」ネットで大反響

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   「きみがカップ焼きそばを作ろうとしている事実について、僕は何も興味を持っていないし、何かを言う権利もない」――。こんな回りくどい書き出しで始まる「村上春樹風カップ焼きそばの作り方」がネットで大きな話題になっている。

   村上春樹の「書き癖」をうまく抽き出し、短い文章の中に押し込んだこのネタ。投稿後に大反響を呼び、江戸川乱歩や夢野久作といった他の作家のバージョンも作られ始めた。

  • 村上ファンにも高評価(菊池良さん提供)
    村上ファンにも高評価(菊池良さん提供)
  • 村上ファンにも高評価(菊池良さん提供)

1週間余りで3万3000回リツイート

   この文章がツイッターに投下されたのは、2016年5月15日。冒頭に挙げた一文の後、「勝手に液体ソースとかやくを取り出せばいいし、容器にお湯を入れて三分待てばいい。その間、きみが何をしようが自由だ」と続く。

   次に「読みかけの本を開いてもいいし、買ったばかりのレコードを聞いてもいい。同居人の退屈な話に耳を傾けたっていい。悪くない選択だ」と出来上がるまでの時間の使い方をサラッと提案。

   最後は「ただ、一つだけ言いたい。完璧な湯切りは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」と締めくくられる。

   厳密には焼きそばの作り方と言えない気もするが、村上春樹特有の独白のような言い回しがあちらこちらに使われている。投稿者の「村上春樹愛」とセンスが評価されたのか、元ツイートは5月23日までに約3万3000回リツイート(拡散)された。村上ファンの反応も「絶妙なウザさが笑える」「たまらん」と好意的だ。

   投稿者は、東京都内のIT系企業に勤める菊池良さん。J-CASTニュースの取材に対し、

「村上春樹がよく使うフレーズを混ぜつつ、簡潔で平明な言い回しを心がけています」

と表現のテクニックを説明する。

   好きな村上作品は「ハードボイルドで、おしゃれな世界が好き」という理由から、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(1985年)。やはり相当な村上春樹フリークらしく、

「(村上作品は)長編に関してはすべて読みました」

と明かす。

   ちなみに、ネタを思いついた瞬間は「パスタを茹でているとき」で、特定の商品を想像することなく記憶を頼りに書いたという。

夢野久作、江戸川乱歩、太宰治、安部公房も「参入」

   その後、このネタは「もし○○が『カップ焼きそばの作り方』を書いたら」シリーズとして、さまざまな作家のバージョンに「転用」された。それぞれ湯切りの場面だけを拾い上げると、こうなる。

「ボーン......ボーン......三分経ったカシラ、と時計を見やれど、目の見えぬ。ソンナ目で、湯切りをしたもんだから、麺が全部、シンクに流れ落ちて行った」(夢野久作バージョン)
「残りは、湯切りだけ、ジリリジリリと、シンクに向かい、器を傾けた時、ふと何かの予感に襲われて、突然ガクンと指を滑らせ、それと同時に、麺がシンクへ」(江戸川乱歩バージョン)
「三分経つ。湯をざあっと切ると、もうだめだ。私は欲望に負けた」(太宰治バージョン)
「湯切りが済んだらソースとスパイス、青のりをいっぺんに入れ、全力で『ワアーッ』とかきまぜる」(椎名誠バージョン)

   こうして見ると、投稿者の想像力もさることながら、文体や表現のバリエーションの多様さに驚かされる。

   ツイッター上には今も、内田百閒、安部公房、司馬遼太郎、北方謙三など作家名を出したリクエストが寄せられ続けている。この「大喜利大会」、まだまだ広がる予感がする。

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