スマートフォン(スマホ)が普及する中、スマホの使い過ぎなどのため、近くのものが見えにくいなど老眼のような症状を訴える若者が増えている。こうした症状は「スマホ老眼」と呼ばれ、ここ数年に急浮上した「現代病」として、注意が呼び掛けられている。
調査研究会社、トレンド総研が2016年1月中旬、20~30代の男女500人のスマホユーザーを対象に実施したアンケート調査によると、スマホを使うようになって「目の悩みが増えた」と答えた人は64%に上った。「スマホ老眼だと思うか」については39%が「そう思う」と回答。スマホ老眼の対策の必要性については、89%が「必要性を感じる」と答えた。
ブルーライトが与えるダメージ
そもそも加齢で生じる老眼が若者の間で広まっている原因は、スマホの使い方にあるとされる。スマホは本や書類を読む時と違って、無意識に目に近づけてしまう傾向が強い。目は「水晶体」と呼ばれるレンズの厚みを調整してピントを自動調整しているが、近くのものを見続けると、水晶体を取り巻く目の筋肉(毛様体筋)がこり固まってしまうのだ。このためピント調整がうまくいかなくなり、老眼と同じ症状を引き起こす。
さらに、スマホは自ら光を放つ発光体であり、光の中にはブルーライト(青色光)が含まれる。ブルーライトは目にダメージを与え、さまざまな目の病気の原因になるとも言われている。
短時間使う分には問題ないが、トレンド総研の同じ調査では、若者の1日のスマホの利用時間は平均3.3時間にも達した。さらに、約3人に1人に当たる31%の人が「5時間以上使っている」と回答している。休みなく長時間使い続けた場合、目の筋肉のこりはなかなかほぐせなくなり、こり固まった状態が慢性化すれば、老眼の症状を完全に回復することは難しくなるとされる。
スマホ利用率、20代では94%
今や多くの人がスマホとは切り離せない生活を送っている。総務省が2015年5月に発表した調査結果によると、スマホの利用率は全世代で62%。50代でも48%とほぼ半数に上るうえ、30代では82%、20代では94%と、若者の大半はスマホを活用している。もはや仕事はもちろん、友人や家族とのコミュニケーションツールとして欠かせない存在だ。
これだけ普及するスマホだけに、「正しく」使う必要がある。多くの医療関係者は「正しく使えば問題なく、スマホ老眼そのものも早期に対処すれば必ず治る」と話している。最も大切なことはスマホを長時間、見続けないこと。一般的には60~90分使えば、10~15分は休むべきだとされている。スマホ総研も「時間を決めて、明るい場所で使うことが重要」などと呼び掛けている。