米国のオバマ大統領が2016年5月27日、現職の米国大統領としては初めて広島市を訪問することになった。オバマ大統領としては「核兵器なき世界」実現に向けての取り組みを強調したい考えだ。日本側は世界の首脳に対して被爆地訪問を求め続けてきた経緯から、オバマ大統領の訪問を強く歓迎している。
だが、韓国や中国といった近隣諸国は必ずしも「歓迎ムード」ではなく、両国のメディアは日本の「被害者」としての面が強調され、「加害者」としての側面が薄れかねないことに対する警戒感を隠さない。
中国、韓国メディアが「歴史問題」とからめて報道
オバマ大統領の広島訪問は、16年5月10日夜、日本政府が最初に発表した。安倍晋三首相は直後に首相官邸で囲み取材に応じ、オバマ大統領の広島訪問を「心から歓迎」するとした上で、「全ての犠牲者を日米でともに追悼する機会としたい」と述べた。被爆地の思いを世界に発信することは「核兵器のない世界へ向けて、大きな力になると信じている」とも述べた。
米国政府側も、ローズ大統領副補佐官が5月10日夜(日本時間)、ブログに
「大統領の広島滞在で、平和と核兵器のない世界の安全保障を追及するという米国の長年の、そして大統領の個人的なコミットメント(関与)を再確認することになるだろう」
と投稿し、広島訪問の意義を強調した。これに加えて、ローズ氏は
「彼(オバマ大統領)は第2次世界大戦末期の原爆使用の決定を再考することはない。代わりに、我々が共有する未来に焦点を当てた前向きな見通しを示すだろう」
とも書いた。「大戦終結のためには原爆投下が必要だった」との主張が根強い米国内世論から「謝罪外交」といった批判が出かねないことに対して予防線を張った形だ。日米で70年以上にわたって続いている「歴史問題」をめぐる落としどころを探ったとも言える。
しかし、韓国や中国では、オバマ大統領の広島訪問も、別の「歴史問題」に関連付けて報じられている。韓国の聯合ニュースは、これまでオバマ大統領が広島訪問をためらってきた理由のひとつとして
「日本に直接被害を受けた韓国をはじめ、アジア周辺国としても『加害者』である日本を『被害者』に変質させる結果になりかねないという懸念が大きかった」
などと解説。東亜日報は、
「一部では、安倍政権が軍事大国化と右傾化を加速させており、戦争を起こした『加害者』の日本が『被害者』のイメージを強化するきっかけになりうるという声も高まっている」
などと警戒感を強めた。