朝日新聞の読者投稿欄「ひととき」に掲載された、大学1年生の娘をもつ母親の文章がインターネット上で反響を呼んでいる。
「誰もくれなかった。(可愛い子だけ)見極めているからと男の子たちが言ってた」――。入学式の日、他大学の男子学生が配るサークル勧誘のビラを1枚ももらえずに落ち込む娘のことを綴ったものだ。
「『こういう風に傷ついてきたんだ』とはっとして...」
投稿者は大阪府吹田市の主婦(54)。「娘よ、元気出して」とのタイトルで、2016年5月5日付の朝日新聞朝刊(大阪本社版)に掲載された。
文章によると、投稿者の娘はこの春、ある女子大の薬学部に進学した。入学式当日、駅から大学まで一緒に歩いていると、学生が花道を作ってサークル勧誘のビラを配っていたという。その多くは、近くの国立大の男子学生だったそうだ。いわゆる「インカレサークル」の勧誘なのだろう。
ところが、ビラは娘の手には渡らなかった。「誰もくれなかった。(可愛い子だけ)見極めているからと男の子たちが言ってた」と娘。母親がよく観察してみると、娘の頭越しに後ろの子にビラを渡していたこともあった。最初は怒っていた娘も、帰りの電車では涙を流していたという。
母親曰く、娘は「地味な子」。中学の時に男子にからかわれ、容姿に自信をなくしたという。高校ではおしゃれをするなど努力していたが、それも高2でぱったりやめ、笑顔も消えてしまった。だが、どこかのタイミングで心機一転したい思いがあったようで、入学式は生まれて初めて薄くメークをして臨んだという。
「娘はいつも『男子はきらい』と言う。私は娘に『男の子を理解できる度量を持てればいいのに』と思っていた。だが『こういう風に傷ついてきたんだ』とはっとして、私も心が痛んだ」
勧誘目的の男子学生にことごとくスルーされ落ち込む姿を間近で見て、胸が締め付けられたようだ。その上で母親は「でも娘よ」と切り出すと、最後にこんなエールを送った。
「目標に向かって努力できる才能を認めてくれる友だちをつくって、笑顔で大学生活を送ってね」
「泣いてしまった...」「やさしいお母さん」
この文章は、あるツイッターユーザーが紹介したこともあり、ネット上で注目を集めた。
「痛いほどこの子の気持ちがわかって泣いてしまった...」
「私そのまんま同じこと入学式でされたわ...」
と共感を示す声や、
「男の俺でもこういう露骨な勧誘はひくわ」
「こんな集団に関わらない方が良い」
などと、サークル側を批判する声が多くあがっている。
ただ、ビラが手渡されなかった理由のすべてが、可愛い子を探す男子学生の「見極め」による結果なのかは、文章の限りでは分からない。たとえば、他に母親と一緒にいる学生があまりいなかったり、うつむきめに歩いていたりすれば、男子学生側も渡しにくいと感じるかもしれない。
そのため、ネット上では「容姿判断」以外の理由もあったのではないか、との指摘も。中には「来てほしい人に渡して、来て欲しくない人には渡さないのは当たり前のこと」と、サークルの自由を主張する意見も出ている。
母親に対しては意見が分かれており、「最後の一文が泣ける」「やさしいお母さん」という声もあれば、「母親がコレ投稿してたの知ったら余計に傷付くだろ」「もっとオシャレを教えてあげるべきだった」との声もある。