米アップルの業績が失速している。2016年1~3月期決算(4月26日発表)は、スマートフォン(スマホ)の「iPhone(アイフォーン)」の販売が2007年の発売以来、初めて前年割れしたことを主因に、13年ぶりの減収になった。
今秋と予想される次期モデルiPhone7を含め、アップルの次の一手に注目が集まる。
中国では一転、26%の売上減少
16年1~3月期の売上高は、前年同期比13%減の505億5700万ドル(約5兆6100億円)で、減収は2003年1~3月期以来。最終(当期)利益は同22%減の105億1600万ドル(約1兆1600億円)だった。不振の原因は、なんといっても、売り上げの6割超を占めるiPhone。同期の世界販売台数は、16%減の5119万台にとどまり、地域別では、増えたのは日本(24%増)だけで、米国10%減、欧州も5%減、さらに大幅増が続いていた中国も26%の大幅な減少に転じた。思い返せば1年前、アップルは画面を大型化させたiPhone6のヒットで最高益を記録した。それが、その後発売した「6s」などに大きな技術革新がなかったうえ、成長の源としてきた中国市場が中国経済の減速で伸び悩んだことも加わり、一気に失速した形だ。
iPhoneのほかも、タブレット型端末「iPad(アイパッド)」の売上高は同19%減と、減少に歯止めがかからず、2015年春発売の腕時計型端末「アップルウオッチ」はウエアラブル端末市場でシェア3位にとどまり、次なるヒット商品を生み出せていない。
iPhone7とM&Aで反転できるか
そこで期待されるのがiPhone7だ。公開されたコンセプト画像から、ネット上では機能やデザインについて憶測が盛んで、iPhone6 Plusの5.5インチのディスプレイが大きすぎるとの声が多いことから、やや小柄の5.2インチサイズとなる、基本的なデザインはiPhone6と大差はなさそう――などの分析が飛び交う。米系メディアによると、ティム・クック最高経営責任者(CEO)は「想像もつかない新機能」を予告してもいる。
専門家の見方は、「防水機能やBluetoothヘッドフォンの採用などがあったとしても訴求力はあまり大きくなく、消費者を引き付けるのは、デュアルカメラ機能やカラーバリエーションの増加程度ではないか」といったあたりが平均的。iPhone6、6Sで従来機種からの買い換えがそれなりに進んだと見られることもあって、iPhone7をもってしても大きな需要喚起は期待できないとの声も目立つ。
主要なハードが減少する中で、注目されるのがM&A(企業の買収・合併)だ。決算発表後の電話会見でクックCEOは「技術と才能のある会社を探している」と述べた。この間、仮想現実(バーチャルリアリティ=VR)や電気自動車(EV)への進出に向けて研究者や他社の技術者も次々と引き抜いていると伝えられ、新分野への投資を加速させる考えとみられる。
ただ、当面の業績は、低空飛行が続きそうだ。16年3月末に投入したiPhoneSEが4~6月期から業績に貢献し始めるが、同期の売上高の予想を前年同期比13~17%減としている。中国の減速が尾を引く可能性が高いと読んでいるからと見られる。
アップル依存度の高い日本企業
アップル製品の生産に関わる日本企業への影響も懸念される。カメラ用画像センサーのソニー、半導体メモリーの東芝のほか、スマホの操作に関わる部品を生産する日本電産、スマホ関係のコンデンサーなどの部品の京セラなど、そうそうたる日本メーカーも売り上げ減などの影響を受けているといわれる。
特に心配なのがシャープ。アップルに液晶パネルなどを納入しており、2015年3月期でアップル向けが連結売上高の約2割を占めた。その後、アップル依存度を下げるため、中国のメーカーにも供給先を広げようと動いているが、中国でもスマホ市場は停滞している。シャープはアップルに対し次世代の有機ELパネル納入を目指しているが、iPhoneの不振が続けば、これまでの巨額投資が期待した利益を生まず、再建シナリオの修正を迫られる恐れもある。