2016年4月8日、2020年の東京五輪・パラリンピックのエンブレムの最終候補4作品が発表された。
佐野研二郎さんデザインのエンブレムがインターネットを中心に炎上、撤回となっただけに、東京2020エンブレム委員会は「ネット対策」に必死だが、一部では「似ているもの探し」も始まっている。
審査風景も一部ネットで公開
エンブレム委員会が公開したデザインは4作品で、それぞれ「組市松紋」「つなぐ輪、広がる和」「超える人」「晴れやかな顔、花咲く」と題されている。すべてデザイナーは匿名で、商標調査をクリア済みだ。
今回のエンブレム公募のきっかけは、商標調査はすべてクリアしていた佐野さんのデザインが「ベルギーの劇場のロゴに似ている」と著作権侵害で訴えられたことにある。さらに東京五輪・パラリンピック組織委員会による一部デザイナーの優遇など選考の不透明な部分も明らかになり、結果撤回することとなった。
これらの反省を踏まえ、今回の選考についてエンブレム委員会は「ネット炎上」対策を必死に練っていた。まず著作権をクリアできるよう、応募段階でコンセプトと制作過程のデッサンも提出させ、デザイナーが自分で考えたことをはっきり証明できるようにしている。さらに審査風景を一部ネット上で公開するなど、透明さもアピールした。デザイナーの名前はエンブレム選考委員にすら伝えられていない。
東京五輪・パラリンピックの公式サイトでは、最終候補作品を公開すると同時に、
「今度は、皆様にもエンブレムの選考に参画していただきたいと思います」
として、10日間意見を提出できるページを作成、それぞれのデザインに対する印象を回答できるようにした。寄せられた意見は「エンブレム委員会による最終審査にあたっての参考とさせていただきます」という。
また最終候補公開直後の8日19時20分から放送されたニコニコ生放送「みんなで選ぶ新しい東京五輪エンブレム」では、エンブレム選考委員会委員である夏野剛さんが、これからニコニコ動画やYahoo!といった場でもどのエンブレムがいいかアンケートが行われるであろうことに触れ、
「こういうメディアで、これぐらいの人数で、こういう結果が出ましたよ、とかいうのはサマライズ(要約)してみんな(エンブレム委員会)に伝えられるようにしているので」
とコメント。ネットの意見も最終審査に反映されることを公言した。
一度は落ちた候補を「繰り上げ」に、不透明の声
一方、すでにネット上では「似ているもの探し」も始まった。同放送では「Firefox」「吉野家」「Benesse」「北京オリンピック」といった「似たロゴ」が次々と挙げられた。またSNS上では「正直どれも似たり寄ったり」と最終候補作品同士が似通っている、と指摘する声もある。
また、新たな不安の種になっているのが「繰り上げ候補」の存在だ。1月上旬に行われた選考では、その時点の通過作品64点から、採用候補を4点と商標などの問題が生じた際の補欠候補4点、合計8点に絞り、商標調査を実施した。
すると、採用候補4点のうち3点、補欠候補4点のうち2点が引っかかってしまった。そこで、次点未満だった56点のうちひとつを「エンブレム委員会の総意から、投票で」繰り上げたという。
この繰り上げの仕組みは選考方法に明示されていなかったこともあり、会見では報道陣から不透明さを問う声が相次いだ。また、ネット上でも
「またケチがついたか」
「なぜ3点のまま最終候補にしなかったのか」
と、冷ややかな目が向けられている。
エンブレムの最終決定は4月25日。今度こそ「炎上せず」愛されるロゴとなれるのだろうか。