2016年3月27日に行われた大相撲春場所千秋楽で横綱白鵬(31)が、立ち合い直後の変化で横綱日馬富士(31)に一瞬で勝ちを収め36回目の優勝を決めると会場は、「勝てば何でもええんか!」「恥を知れ!」などと大ブーイングに包まれ、表彰式を待たずに観客の半分近くが帰るという事態になった。
いわゆる横綱同士の「横綱相撲」を怠ったという白鵬への批判が噴出したわけだが、ネット上では土俵から一直線に土俵下に駆け下りていった日馬富士こそ無様で、横綱としての力量が足りない。「戦犯はむしろ日馬富士」などといった評価も出ている。
日馬富士は突進し、何もできずに「自爆」した
白鵬はこの一番で勝つと36回目の優勝が決まり、負ければ大関稀勢の里との優勝決定戦にもつれ込む。行司が軍配を返すと日馬富士が突進し、白鵬は右手を出して直ぐに左に寄った。日馬富士はそのまま土俵下に駆け下り一瞬で勝負が決まった。観客はあっけに取られた後に席を立ち、表彰式が始まる前に半数以上の人が帰っていった。解説の北の富士勝昭さんは、「お客様に申し訳ない」とした後で、
「横綱同士の、せめて千秋楽の変化はやめてほしいね。昔はこんなことはなかったと思うよ」
と激怒した。表彰式で土俵に現れた白鵬に観客は「勝てば何でもええんか!」「恥を知れ!」「変わり身はやめろ!」などといったヤジが飛んだ。優勝インタビューでマイクを向けられた白鵬はそれをじっと聞いていて言葉が出なくなった。そして、
「本当に千秋楽、ああいう変化で決まるとは思っていなかったので、本当に申し訳ないと思います」
と謝罪した。その後も声が詰まってうまく話せなくなり、何度も「すいません」と謝っているうちに涙が溢れ、手で涙を拭った。
その表情はNHKで全国に生中継され、ネット上でも、
「情けなくて相撲を見たくなくなる。早く引退しろ」
などといった批判が出た。
しかし一夜明けるとネット上の反応が少し違ってきた。「変化」は相撲で認められている技の一つ。それを白鵬が上手く使っただけで、情けないのは何もできずに土俵下に駆け下りて「自爆」した日馬富士であり、日馬富士こそ横綱としての力量が無いと批判されるべきではないのか、というのだ。
最初はお互いに「横綱相撲」を取ろうとしていた?
ネット上では、
「やっぱ気付いてる奴は気付いてるけど、これ一番だめなの日馬富士だよな」
「日馬富士のが悪いだろ。横綱が土俵外まで突っ込むとかギャグか」
「戻れなかった日馬富士は本当にみっともない。白鵬はそのまま行っちゃうの?て驚きの目で日馬富士をみてた」
「日馬富士のコンディション悪かったとしても対応できんとか擁護できん。横綱やめろ日馬富士」
などといった意見がネット掲示板には出ている。
いったいどっちが、より批判されるべきなのか。
J-CASTニュースが相撲に詳しいスポーツジャーナリストの岡田忠さんに解説してもらった。
日馬富士の持ち味は低く鋭く突っ込んで行き相手を押し上げる戦法。白鵬は当然それを知っていて対策を講じている。日馬富士が一瞬で土俵から外に出てしまったのは、千秋楽の横綱対決でまさか「変化」などはせずに「横綱相撲」になるものだと信じていたから。そういう思いでぶつかっていった場合は「変化」に対応するのは不可能だ。
一方で白鵬はどうしても一勝が欲しかった。もちろん始めは「横綱相撲」を取るつもりでいたが、日馬富士の突進スピードを見て対応できないと感じ左によけ、結果的に「変化」になった。
「あんな相撲を取ってはいけないんですよ。白鵬の強さは折り紙つきですし、本来なら日馬富士の突進を受け止め横綱相撲に持って行く力はあるはずなのに、それが出来なかったということは衰えが来ている、ということなのかもしれません」
二人の横綱ともに限界が来ているのかもしれない。