玩具メーカーのバンダイが、一般的によく使われる言葉「必殺技」の商標出願をしていたことが分かり、ネット上で、疑問や批判が相次いでいる。そもそも、こんな出願が通ることはあるのだろうか。
話題になったきっかけは、「商標速報bot」というツイッターアカウントが2016年2月8日にバンダイの出願を伝えたことだった。
「今後この三文字使用に許可や金がいるのか」
「必殺技」は1月19日付で出願されており、区分は、テレビゲーム機やカードゲーム、スロットマシンなどを含む「28類」になっている。読み方は、一般名詞と同じ「ひっさつわざ」だ。
ツイートは、ネット上で話題になり、次第に拡散して、3月15日にはメディアで報じられるほどになった。一般名詞だけに、ネットの書き込みは、それを商標に使うことへの疑問や批判の方が多い。
「は? バンダイ何考えてるんだ?」「これが受理されたら大変な事になる」「今後この三文字使用に許可や金がいるのか」
一方で、その狙いについて、様々な憶測が流れている。
バンダイは、子供たちに人気のアニメ「妖怪ウォッチ」のメダル商品に「必殺技」の名を使っている。このことから、他社がその名を使うのを阻止したり、先に商標登録されるのを防いだりするためではないかとの指摘があった。
また、中国での商標登録悪用を受け、特許庁が企業に訴訟費用を補助すると報じられたことから、バンダイはその意を受けて悪用対策として商標出願をしたのでは、との声もあった。さらに、だれかが「必殺技」を商標登録すれば使えなくなるため、それを防ごうと業界を代表して出願したのかもしれない、といった見方まで出ている。
バンダイの広報担当者は、その狙いについて、取材に次のように説明した。
バンダイは「商品名を継続利用するため」と釈明
「商標登録の目的としては、ブランド名を保全したり、模倣品の被害を防いだり、商品名を安心して継続利用できるようしたり、など様々なケースがあります。今回は、『必殺技』をメダルなどの商品名として使用しているため、継続利用する目的で出願しました」
他社がその名を使えないようにしたり、商標登録悪用を防いだりするためかなど詳細な理由については、「個別のことについては、お答えは差し控えさせていただきます」とした。
実は、バンダイは、「必殺」の名については、1996年に今回と同じ「28類」で商標登録をして、現在もその商標を保持している。広報担当者は、20年前のことなのではっきりしないとしながらも、今回と同様な理由のはずだと言っている。なお、「必殺」の名ではほかに、薬剤の「5類」と酒類の「33類」で計2件の商標登録がある。
特許庁の広報室では、今回の「必殺技」商標出願について、まだ判断していないと取材に答えた。通常は、審査に4~6か月かかるという。
一般名詞でも審査に通るのかについては、こう説明する。
「パソコンの区分で『みかん』の商標のように、その業界で、一般名詞とされていなければ通る可能性はあります。果物の区分の中の『みかん』とは意味合いが違います。もちろん、一般名詞かは微妙なケースもありますので、そのときは審査官が判断することになります。20年前のことは、そのときの状況で判断したはずですが、基本は変わっていないと思います」