バラエティ番組で若者らが高齢者に暴言を吐くシーンを意図的に作られ、イメージが悪くなった――。茨城県水戸市がこう訴えてTBSに抗議したことが、ネット上で論議になっている。
「水戸なら今でも印籠の効果あるんじゃないか説」。水戸市が問題にしたのは、「水曜日のダウンタウン」で2016年2月3日に放送したこんな企画だ。
放送後「水戸こわすぎ」との声が相次ぐ
番組では、水戸黄門に扮する高齢者男性がJR水戸駅周辺にいるマナーの悪い人に次々と注意していった。反抗的な態度に出られれば、助さん格さんに扮したスタッフ2人が黄門の印籠を示し、その効果を確かめるという設定だ。
高齢者はまず、歩きスマホの人に注意したが、反論されることはなく、迷惑な場所でタバコを吸っている「ヤンチャそうな人」に狙いを定めた。
3番目に注意した若者の男性4人組は、「何?」などと初めて反抗的な態度を示した。
「やんのかコノヤロー! 警察でも何でも呼ばれコノヤロー!」
タバコをふかしながら怒り出したため、助さん格さん役2人が若者らの前に立ち、「控えおろう」「この紋所が目に入らぬか!」と印籠を差し出した。ところが、若者らは、「バカにしてんのかコノヤロー!」とさらに凄み、2人に詰め寄って突き飛ばすなどした。映像にはなかったが、暴力を振るわれているかのような音も聞こえていた。
高齢者が若者らにお詫びしてその場を収めたが、高齢者は「危ないとこでした」とつぶやいていた。スタジオで笑いが起こると、番組で「ちょっとドキュメントをお見せしてしまいました」と説明があり、ダウンタウンの松本人志さんが「2度と止めてね」と発言して終わった。
放送後には、このシーンがツイッターなどで大きな話題になり、「水戸こわすぎでしょ」「やっぱガラが悪いわ」「ヤンキーDQNすぎて腹立たしい」といった声が相次いだ。
「ヤラセがあったとは考えておりません」
これに対し、水戸市は、市のイメージダウンになるとしてTBSに説明を求め、3月1日になって、番組内での謝罪や訂正を求めた。放送倫理上の問題があるとして、放送倫理・番組向上機構(BPO)にも意見書を提出する事態になっている。
市の「みとの魅力発信課」では、J-CASTニュースの取材に対し、TBSから提出してもらった番組の企画書には若者4人組はTBSが手配したエキストラとされてあったとして、「ドキュメントとして放送したのはおかしい」と批判した。TBSは、4人組に駅に来てほしいと言っただけだとして、暴言が演出であることは否定したというが、4人組には、水戸市民でない人もいたという。
市では、取材に対し、「番組は、ヤラセではないかと考えています。梅まつりの直前だったのに、これで観光客が来なくなることは困ります」と話している。
TBSの広報部では、「BPOへの意見書を十分に検討した上で、今後も誠意をもって対応してまいります」と取材にコメントした。若者らが暴言を吐くようにヤラセをしたかについては、「そのようには、考えておりません」と答えた。
ネット上では、番組について、「放送禁止レベルだった」「水戸のイメージが悪くなる」と批判が出ている一方、水戸市の対応についても、「そんなんだからテレビが詰まらなくなる」「騒げば騒ぐほどイメージ下がる」といった冷ややかな声も出て、論議になっている。
過去にも、「水曜日のダウンタウン」の番組では、14年7月30日の放送で兵庫県尼崎市のイメージダウンになるようなシーンがあったとネット上で騒ぎがあった。このときは、尼崎市がTBSに抗議することはなかったが、市の都市魅力創造発信課では、「面白おかしく取り上げられただけで、事実と違うという内容ではありませんでしたので、抗議には値しないと考えました」と言っている。