賞味期限の切れた食品を「格安」で――。食品廃棄量の削減を目的に、「廃棄品」を販売するスーパーマーケットが海外に登場し、日本のネットユーザーからも大きな注目を集めている。
年間の食品廃棄量が642万トンにも達する日本。いわゆる「食品ロス」問題の解決に向け、ネットでは「国内でも解禁すべき」といった声が飛び交っているが、消費者庁は「賞味期限切れの商品を販売することは、販売者として適切でない行為」として、自治体や保健所の指導対象だと説明する。しかし、すでに日本でも「期限切れ食品」を販売している店があった。
デンマークでは大臣出席でオープンセレモニー
デンマークのコペンハーゲンに2016年2月22日にオープンした「We Food(ウィー・フード)」。賞味期限が過ぎた商品や見た目の悪い生鮮食品など、他のスーパーでは販売できない商品を扱う「廃棄品専門スーパー」だ。地元の食品会社や小売業者から廃棄品を無償で仕入れ、通常価格より30~50%割り引いた価格で販売している。
ウィー・フードは地元の慈善団体とNGO団体が共同で運営する非営利事業で、食品廃棄量の削減を目的としている。スタッフは全てボランティアで、利益は飢餓に苦しむ国への支援事業に使われる。地元紙「The Copenhagen Post(コペンハーゲン・ポスト)」によると、22日のオープン時にはデンマークの食品・環境大臣も出席し、この活動を「食品廃棄問題を解決する大きな一歩」と歓迎したという。
消費者は通常よりも安い価格で商品を購入できる上に、食品廃棄量の削減にもつながる――。まさに一石二鳥といえるこの取り組みに、日本のネットユーザーも大きな注目と期待を寄せている。
ウィー・フードの開店を取り上げた27日の国内ニュースサイトの記事は、29日14時までにフェイスブックで1万5000回以上のシェア数を記録。ツイッターを見ても、
「このような流れは今後日本でも広がるのではないかな。もったいないの国として」
「素晴らしい!日本にも出来たら嬉しいな」
「日本でもやればいいのに。賞味期限切れは全然食べれるし食品にもアウトレット的なのあっても良いと思う」
といった声が相次いで寄せられている。
だが、国内で賞味期限の過ぎた商品を販売することは問題ないのだろうか。消費者庁の食品表示企画課はJ-CASTニュースの取材に、
「賞味期限切れの商品を販売したからといって、ただちに罰則の対象となるわけではありません。ですが、販売者として『適切でない行為』といえますので、自治体や保健所の指導対象となります」
と答えた。また、賞味期限を過ぎた商品を販売し、購入者に食中毒などの健康被害が発生した場合、製造業者よりも販売側に大きな責任が課されるという。
期限の切れた食品を「明記」して売って、苦情が来たことはない
消費者庁の見解は「指導対象」と手厳しいが、実は国内にも賞味期限切れの商品を扱う小売店はすでに存在する。東京・亀戸に店舗を構える個人経営の小売店「サンケイスーパー」だ。店内に「もったいない棚」という販売スペースを設け、少なくとも10年前ほどから、賞味期限の過ぎたジュースやインスタント食品などの食品を格安で販売しているのだ。
同店は、J-CASTニュースの取材に「賞味期限が切れていることを明記して販売していますので、これまで購入者からクレームが来たことはありません」と回答。店では賞味期限切れ商品の販売を以前から続けているというが、これまで保健所や自治体から指導を受けたことはないそうだ。
また、15年2月にオープンした通販サイト「KURADASHI.jp」(運営会社・グラウクス)の活動にも注目が集まっている。同サイトでは、賞味期限の迫った商品や販売終了商品など、これまで廃棄されていた食品をメーカーから引き受け、定価より約30~90%割り引いて販売している。
だが、同サイトでは「賞味期限の切れた食品」は扱っていない。その理由について、グラウクスはJ-CASTニュースの取材に、「そもそも、賞味期限の過ぎた廃棄品というのは、国内にはあまり存在しません」と説明する。
「国内にある食品メーカーの多くは賞味期限が切れる前、つまり一般の流通ラインに乗せられなくなった段階で商品を廃棄してしまいます。そのため、『KURADASHI.jp』では、賞味期限の切れた食品ではなく、大量に存在する賞味期限内の廃棄品を扱っています」
メーカーがこうした対応をせざるを得ない消費のあり方に根本的な問題がありそうだ。