再現度の高いケチャップ味に、ほのかに感じるピーマンの風味――。開発担当者が「スパゲッティ・ナポリタンを忠実に再現できた」と胸を張った、赤城乳業の「ガリガリ君リッチ ナポリタン味」。2014年3月の発売当初には「とてもアイスとは思えない斬新すぎる味」としてネットを中心に大きな話題を集めたが、実際は「取り返しのつかないほどの大赤字」を出していた。
16年2月13日放送のバラエティー番組「ジョブチューン」(TBS系)で、赤城乳業の社員がその「大コケ」ぶりを赤裸々に語った。ナポリタン味は320万本以上売れ残り、3億円近い大赤字を出したのだという。番組では、売上不振の理由について「(商品が)マズかったから」と説明していたが、本当なのだろうか。
大赤字の本当の理由は「販売予測を間違えた」から
番組に出演した同社のマーケティング部長によると、ナポリタン味が売れなかった理由は「マズかったから」。最終的に320万本以上が売れ残り、赤字額は3億円近くにまで達したという。また、商品を購入した顧客からも「いい加減にしろ」「マズい」などと問い合わせが殺到したそうだ。
発売前の会議でも味についての評判は芳しくなかったようで、開発を担当した若手社員も「正直なところ、社内にもおいしいという人間はいなかったですね」と暴露。本人ですら「ナポリタンを再現できた点には自信を持っているが、味はあんまり......」という始末だった。
では、なぜ「マズい」と分かっている商品を発売したのか。その理由について番組では、12年に発売した「コーンポタージュ味」と13年の「クレアおばさんのシチュー味」、異色のフレーバーが続けてヒットしたことで「(商品開発部に)魔が差した」と説明していた。
――しかし、「マズいとわかっていた商品をそのまま販売して、3億円近い赤字を出す」なんて間抜けなことが本当にあり得るのだろうか。
番組にも出演していた同社マーケティング部長は、J-CASTニュースの取材に対し、「実際のところ、ナポリタン味が赤字を出した原因は、我々が販売予測を大きく間違えてしまったことにあります」と番組では語らなかった真相を明かした。
「コーンポタージュ味やシチュー味といった『変わり種商品』を連続で発売していたため、世間に与えるインパクトが必然的に小さくなってしまった。そういう点を見抜けずに生産してしまったため、相当数の売れ残りが発生し、大きな赤字を出す結果となってしまいました。もちろん、商品がマズかったのも売れ残った理由の1つにあるとは思いますが」
「今年のガリガリ君は攻めてないね」と批判
そもそも、いったいなぜ赤城乳業は「コーンポタージュ味」や「ナポリタン味」といった変わり種商品を発売したのか。マーケティング部長によると、その理由は「大手コンビニエンスストアのバイヤーに発破をかけられたのがきっかけ」だという。
赤城乳業は2010年から2年連続で「ガリガリ君」シリーズが品薄状態となり、マスコミや流通から批判を浴びた経験がある。こうした経緯もあり、12年は「安定供給」を目標として、販売予測が立てやすい商品を中心に展開していた。
「ガリガリ君」は毎年夏に新商品を発売していたが、商品の供給を優先した12年は開発にまで手が回らなかった。そんな折、赤城乳業はある大手コンビニのバイヤーに「今年のガリガリ君は攻めてないね」と批判を受けてしまった。さらに、「ガリガリ君は常に遊び心を持って新しいことにチャレンジしてほしい。赤城乳業にはその責任、義務があると思う」と発破までかけられたそうだ。
このバイヤーの言葉に、「正直、馬鹿にされたと思いました」「それならやってやろう」と発奮した社員が手掛けたのが、12年9月に発売され大ヒットを記録した「コーンポタージュ味」だった。この商品に使ったPR予算は15万円だったというが、ネット上で大きな話題を呼んだことで各局のワイドショーがこぞって取り上げ、最終的には広告費換算で5億5000万円もの宣伝効果をあげたという。
ところで、赤城乳業が再びナポリタン味のような変わり種商品を発売する可能性はあるのだろうか。同社は、「構想はあるのですが、販売となるとハードルが高いのが現状です。お客様の期待も高くなっている上に、1度ナポリタンで大失敗していますから......。なかなか難しいですね」と答えた。