10年ぶりの日本出身力士の優勝で盛り上がった大相撲だったが、その直後の理事候補選で元横綱の千代の富士が立候補を取りやめ、暗い雰囲気が漂った。権力争いの土俵を見るようだ...。
初場所を終えてからの1週間は、琴奨菊フィーバーだった。2016年1月24日の千秋楽に優勝を決め、30日には結婚式と、相撲界は賑わった。だが、その間、親方たちは権力闘争に必死だった。
大横綱「千代の富士」が理事になれない
理事候補の選挙である。任期満了にともなう理事選挙(3月)を前に、その候補を選ぶ選挙が29日に行われた。琴奨菊結婚披露宴の前日だ。
立候補届けの28日に異変が起きた。
「立候補しない」
大横綱だった元千代の富士、九重親方が立候補を取りやめたのだ。2期ぶりの返り咲きを目指していたが、土壇場で放棄することになった。
「(票を)まとめられなかった」
理由をそう語っている。勝負にならないので降りたというわけである。
現在、投票権を持つ親方(年寄)は99人。定数10人に対し、11人が立候補して争ったのが今回の選挙である。
ファンからしてみると、千代の富士が理事にもなれないのは、不思議でならない出来事だろう。一時代を築き、大相撲を支えたスーパースターを支持する動きがないのは、どうしても理解できないところである。
「現役時代、後輩横綱だった北勝海(八角親方)が、急逝した北の湖理事長の後任に収まったとき、千代の富士の置かれた立場が分かったファンが多かった、と思う」
相撲記者の解説である。
そのうえ、理事復活を狙った今回の選挙に立候補すらできないのだ。現役時代と現在の落差に驚くばかりである。