SMAPの独立・解散騒動の影響なのか、古代ローマ人が書いたとされる単行本、「奴隷のしつけ方」の売れ行きが急激に伸びているという。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ような話だが、一体どうしてなのだろうか。
古代ローマの奴隷とSMAPは「状況が似ている」
SMAP解散騒動のなかでにわかに注目を集めているのは、太田出版が2015年5月に日本語版を発売した「奴隷のしつけ方」という書籍だ。16年1月22日18時時点で、Amazonの本カテゴリの世界史部門で売り上げ1位、総合部門でも60位。現在は在庫切れ状態で、中古本の価格も高騰しているようだ。
著者は古代ローマ人のマルクス・シドニウス・ファルクスとされているが、実際に執筆したのはイギリスの古典学者であるジェリー・トナー教授。教授が架空のローマ貴族になりきって、奴隷制度やそれに関する習俗を解説したものだ。当たり前だが、SMAPに関する記述は一切ない。
――では、いったいなぜこの書籍が注目を集めることになったのだろうか。そのひとつのきっかけは、ジャーナリストの石井孝明氏が16年1月19日に言論プラットフォーム「アゴラ」へ寄稿した、「奴隷はなぜ逃げないのか―SMAP独立騒動から」というコラム記事にある。
記事の中で石井氏は、SMAPを誹謗中傷するつもりはないと前置きした上で、古代ローマの奴隷とSMAPは「状況が似ている」と指摘する。どちらも、奴隷の主人や事務所の手により、「自由を求めて立ち上がるよりも、今の状況がましだ」と思わざるを得ない状況に追い込まれているというのだ。SMAPのケースでいえば、「仕事を干される恐怖」が自由を束縛する枷の役割を果たしていたという。
このコラムの中で、石井氏が「奴隷のしつけ方」を取り上げたことで、ネットユーザーが大きな注目を寄せ、Amazonでの注文が殺到したというわけだ。
「いらぬ誤解や偏見を生んでしまわないか不安」
今回の解散騒動を受けて、SMAPのことを「奴隷」と表現したのは石井氏だけではない。トークバラエティ番組「バラいろダンディ」(TOKYO MX系)のコメンテーターで認知科学者の苫米地英人氏も16年1月21日に更新したブログで、「今回のSMAP独立騒動で、『タレント奴隷制』が浮き彫り」になったと指摘する。
この苫米地氏のブログもネット上で話題となっており、「奴隷のしつけ方」への注目がさらに高まる一因となった。ツイッターには、
「SMAP謝罪放送からの『奴隷のしつけ方』本が売れるという、風が吹けば的なことは想像できんかった(笑)」
「amazonのカテゴリ別で1位ってSMAP様様だな」
「SMAP問題より『奴隷のしつけ方』読みたくなった」
といった投稿が寄せられている。
ただ、こうした状況を出版社側はどう考えているのだろうか。版元の太田出版はJ-CASTニュースの取材に対し、
「予想していない注目のされ方でしたので、ただ驚いているというのが本心です。書籍が売れることは単純に嬉しいのですが、刺激的なタイトルですので、いらぬ誤解や偏見を生んでしまわないか不安でもあります。中身をしっかり呼んで頂ければ、真面目な本だと分かってもらえると思うんですが......」
と答えた。