近年、日本では鉄道や地方自治体のキャンペーンで見る機会も多くなった「萌えキャラ」。台湾でも総統選挙で圧勝し、史上初の女性総統となる民主進歩党(民進党)主席の蔡英文(ツァイインウェン)氏(59)が自身をモチーフにした萌えキャラを作り、話題となっている。
クリッとしたつぶらな瞳に、猫の耳を模したようなヘッドホン、ゲームやアニメのファンならどこかで見たことのあるような、親しみやすいデザインだ。日本のネットユーザーは「何故か好感持てる」「日本以上に萌え文化が根付いている」と好意的な反応を寄せる。
「総統選は、世界を萌え力で制覇する」
蔡氏は2015年2月に総統選挙への立候補を表明し、馬英九政権が進めた外交、経済政策に失望する有権者の支持を集めた。そして16年1月16日投開票された総統選では、与党・国民党の朱立倫(ジューリールン)氏(54)を破り、見事「政権交代」を成し遂げた。
そんな蔡氏の選挙戦略で注目されたのが、萌えキャラ「3D小英」を使ったPRだ。他でもない自身がモデルとなった美少女キャラクターで、招き猫のように手首を下へ曲げたポーズが特徴だ。
初登場は15年12月の初め。3D小英のコスプレをした若い女性が司会のイベントで、本人立会いのもと、お披露目された。少女のようなそのデザインには、日本のサブカルチャー作品の影響が強く感じられる。実際、イベントの途中に出席者がドラえもんや人気作品「ONE PIECE」の主人公・ルフィに言及する場面もあった。
蔡陣営の萌えキャラ戦法はここから多方面に展開される。3D小英が歩いたり、空を飛んだりするプロモーションビデオ(PV)を制作し、台北市に3D小英のグッズ専門店をオープンさせた。
選挙戦に直接は無関係ながら、日本人へのアピールも忘れていない。民進党が15年12月11日、前出のPVを動画サイト「ニコニコ動画」へ投稿している。紹介文のコーナーで「前代未聞 超カワイイ政治力が襲来!」「総統選は、世界を萌え力で制覇すると宣言します!」と力強く日本語で宣伝した。
「日本以上に萌え文化が根付いている」と驚嘆
宣伝の甲斐あり、動画は16年1月18日18時までに3万5000回再生され、1500近くものコメントが集まっている。
立候補者が「萌えキャラ」となって有権者にアピールする――。およそ日本では考えられない選挙の形に、日本のネットユーザーは、
「何故か好感持てる」
「日本以上に萌え文化が根付いている」
「普通によく出来てる...」
と驚き、喜びの声を寄せている。
選挙にまで萌えキャラを取り入れてしまった台湾だが、こうした動きを生む「素地」はすでにあった。
2014年、高雄市の市営地下鉄「高雄捷運(KMRT)」がマナー啓発キャンペーンのため、日本の美少女アニメを意識したような公式キャラクター「小穹(シャオチョン)」を作った。黒いロングヘアと白、水色の制服という「清楚」なイメージが人気を呼び、日本でも「進め!高捷少女」(GA文庫)としてライトノベル化されている。
また、2010年にはマイクロソフトの台湾法人が、新しく売り出すソフトを「藍澤光(あいざわ・ひかる)」の名で萌えキャラ化し、キャンペーンサイトを立ち上げるといった具合だ。