「また今日も地鳴り このゴォーーって音めちゃくちゃ怖い」――。2016年1月5日以降、関東を中心に「地鳴りのような音が聞こえる」との報告が連日のようにネットに相次いでいる。
専門家は「今回の件が本当に『地鳴り』だったかは疑わしい」とみている。しかし、正体が不明なだけに、「大型地震の予兆では......」といった不安の声がおさまらない。
「重機を引きずるような不気味な音」
16年1月5日、ツイッター上に「地鳴りが聞こえた」との報告が多数寄せられた。地鳴りを耳にしたのは、主に東京都内に住むユーザーだ。彼らの報告によると、ピークは14時20分ごろで、「今までに聞いたことがないほど大きい地鳴り」「重機を引きずるような不気味な音」だったという。
相当数のユーザーがツイッターに報告したようで、ツイッターのトレンドワードにも一時「地鳴り」が登場した。ネットで「地鳴り」を検索する人も急増し、翌6日にはヤフーの「急上昇ワード」の3位にランクインした。
その後もツイッターには地鳴りのような音を聞いたとの報告が連日寄せられており、8日も関東各地で「地鳴り聞こえた...」「今朝地鳴りがすごかった」などといった声があがっている。
「2011年の東日本大震災の前にも地鳴りが発生していた」との噂も飛び交っており、大型地震の前兆ではないかと不安に駆られる人も少なくない。ここ数日、細長い帯状の雲が並行に連なる「地震雲」が関東地方で観測されていることも、不安に拍車をかけているようだ。
また、音は東京湾の方角から聞こえてきたとの報告も多く、15年12月26日に発生した東京湾での群発地震と関連付け、「関東大震災の予兆ではないか」と考えるユーザーも出ている。
研究者ですら地鳴りの音を聞いたことがある人はほとんどいない
しかし、地鳴りと地震予知の関係が科学的に証明されたことはない。さらに、専門家は今回の騒動そのものに懐疑的な見方をしているようだ。東海大学海洋研究所地震予知研究センター長の長尾年恭(としやす)教授はJ-CASTニュースの取材に対し、
「みなさんが、なぜ『地鳴り』だと断言しているのか不思議でなりません。そもそも、研究者ですら地鳴りの音を聞いたことがある人はほとんどいないのです。今回のケースでは、騒音の激しい都心でこれだけ多くの人間が同時に『地鳴り』を聞いています。もしこれが本当だとしたら歴史上初のケースですよ」
と、今回のケースが「地鳴りだった可能性は低い」とみている。また、現在のところ首都圏直下に異常は見られず、そもそも「大地震の前に地鳴りが確認された」というケースは全体の1割にも満たないという。
発生している地鳴りのような音について、「飛行機やヘリコプターなど、人工的なものではないか」と考えるユーザーもいる。なかには、「米軍の飛行訓練」や「北朝鮮の核実験の影響」といったような、「陰謀論」に近い意見も少なくない。
前出の長尾教授は、
「今回の件が本当に地鳴りだったかどうかは分かりませんが、これをきっかけにみなさんの防災意識が高まれば幸いです」
といっている。