経済産業省は2015年12月、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を見直すことを決めた。2017年以降に実施される。
事業用の太陽光発電に入札制を取り入れ、安い価格を示した業者から買い取るようにして、再エネの普及をすすめつつ国民負担を抑える。再エネの新規参入が太陽光に偏っている現状を改める狙いがある。制度改正で、再エネをめぐる状況はどう変わるのか。
認定された36万件の発電設備が稼働していない
FITは、原発や火力発電などに比べてコストが高い再生エネルギーの普及を促進するため、太陽光、風力、中小水力、地熱、バイオマスの5種類の電力を最長20年間、国が認定した価格で電力会社が買い取ることを義務付ける制度。認定時に決めた価格で長期間、買い取ることを保証することにより、再生エネルギーの普及を加速するためだ。コストが割高な分は「賦課金」として電気料金に上乗せされ、電気利用者が負担している。買い取り価格は国が毎年、種類ごとに、発電にかかるコストと事業者の利潤などを勘案して決める。
2012年7月に導入され、2015年3月末までに発電を始めた再生エネルギー設備は、計1875万キロワットと原発十数基分まで急拡大したが、問題は9割以上を太陽光が占めていることだ。
風力や地熱などは、地域が限られ大掛かりな設備が必要で、国の環境評価にも時間がかかるのに比べ、太陽光は設置が容易なのが最大の理由だ。再生エネルギー普及を急ぐために、太陽光を優遇した経緯もある。2015年度の1キロワット時当たりの買い取り価格(税抜)は、太陽光(出力10キロワット以上・7月以降)は27円、風力(20キロワット以上)22円、地熱(1万5000キロワット以上)26円となっているが、制度開始当初40円と破格といえる扱いだった。太陽光は年々引き下げられて、今の水準になった。
また、再生エネルギーの拡大に伴い、標準的な家庭が負担する賦課金は2012年度の月66円から2015年度は月474円と7倍になっている。
一方、2012~13年度に政府認定を受けた設備のうち36万件がまだ稼働していない。買い取り権利の転売狙いや、発電設備の値下がりを待って運転開始を遅らせる、あるいは発電できる見通しがないのに認定を得た「空押さえ」が多いとされる。
利用者の「負担減」と事業者の「投資意欲」の綱引き
経産省が2017年以降に始める新制度は、事業用太陽光の買い取り価格を、発電コストが低い事業者を基準に決める「トップランナー方式」に改め、その価格での年間導入量が想定を超えた場合、翌年度は国が導入量を決めて入札にかけ、価格が安い業者から順に落札するようにする。
一方で、風力や地熱は、入札はせず、買い取り価格を一定比率で毎年下げる方式に変え、2~5年先の買い取り価格を示し、事業者が将来の事業見通しを立てやすくする。併せて、環境影響評価の期間を半分に減らすなどの改善策も示した。
こうした改革には、ユーザーが負担する料金の上昇がある程度抑えられると期待がある一方、事業者にとっては、落札に失敗して買い取ってもらえなくなるリスクが生じるなど、投資意欲が鈍る懸念もある。