神戸市長田区の「神戸アニメストリート」の公式「目玉ロゴ」をめぐって、現代芸術家・村上隆さんが自らの作品に似ているとして、「権利侵害の申し立て」をしたことに対し、ネット上では「似ていない」「言いがかりだ」と、村上さんへの反発が起こっている。
一方の村上さんサイドも、ツイッター上の「似ている」という指摘で知ったとして、「ロゴだけでなく、色彩感覚や世界観も含めて判断した」と主張している。結局、目玉ロゴは消えることになりそうだ。
色彩感覚や世界観も含めて「似ている」と判断
神戸アニメストリートは2015年3月に設立。アニメに特化したまちづくりを進める神戸市と兵庫県が連携し、市営地下鉄海岸線駒ヶ林駅前の商業施設「アスタくにづか」の3番館、5番館にオープンさせた。普段は映像制作やフィギュアの製造販売を手掛ける。そのシンボルマークとして公式サイトや各種商品に使われたのが、目玉ロゴだった。
しかし、村上さんが設立した会社「カイカイキキ」(東京都港区)から15年7月、「目玉ロゴが村上作品に誤認されるおそれがある」と指摘される。双方協議の結果、12月4日、神戸アニメストリートの公式サイトで16年3月末日以降は新デザインのロゴに変更する、との合意内容が発表された。
これが複数メディアに報じられると、
「似てない」
「ただの言いがかりだろ」
といった声がネットで噴出。逆に、村上さんが批判される形となった。
村上さん側が「似ている」と判断した理由は何なのか。村上さんの代理人弁護士はJ-CASTニュースの取材に、「決して目玉ロゴだけを問題視したわけではありません。表現されていた色彩感覚や世界観も含め、『村上作品を知らなければ描けない』と判断しました」と話す。村上さんは1990年代から目玉をモチーフにしたイラストを描き、それを「オタク」「カラフルな色」といった独自の世界観に落とし込んだ。神戸アニメストリートの目玉ロゴにはそうした要素がすべて反映されている、との主張だ。
「世界観と言われてもキョトンとしてしまいます」
代理人弁護士によると、もとはツイッターで「目玉ロゴと村上作品が似ている」と話題になり、カイカイキキ側もこれで事態を察知したという。
双方にビジネス上の関係は全くなく、「無関係なのに村上作品を想起させるようなイラストを使われていたので、村上ファンやアート関係者の誤解を招かないためにも、早いうちに変えて頂いた方がいいと判断しました」と振り返った。
ちなみに当の村上さんはツイッターで、当件に関連した自身に批判的なツイートを1つ1つリツイート(拡散)しているが、その真意は不明だ。
一方、神戸アニメストリートの担当者は取材に対し、「事務所の床面や壁面に目玉ロゴを使うと、その部分の汚れが目立つ」との理由から、もともと16年3月にデザインを変更する予定だったと明かし、「(カイカイキキ側に)言われたから変えるわけではありません」と断言した。
ロゴはNPO法人「KOBE鉄人プロジェクト」のデザイナーと共同で制作。「A4の紙に『アニメ』と書いて想像を膨らませていたら、『aの中に目を書いたら面白いんちゃうか』という話になりました。村上作品をまねたわけではありません」と制作過程を話した。
カイカイキキ側から具体的な類似点は指摘されなかったようで、「世界観と言われてもキョトンとしてしまいます」と困惑の色を浮かべる。ただ「仮に裁判になるといってもその頃にロゴは変わっているので、争ってもしょうがないと思いました」とも話した。
朝から応援メッセージが200通以上届いているという神戸アニメストリートのオフィス。取材の最後、担当者は「似ている似ていないは周りの人に判断してもらったら良いです」と記者に話していた。