東京大学への合格を目指す人工知能「東(とう)ロボくん」の模試成績に、ネット上で驚きの声が上がっている。
東大の合格偏差値(ベネッセの基準でおよそ70)には至っていないものの、30以上の国立大学、400以上の私立大学で合格率80%以上のA判定を獲得したというのだ。年明けの入試を控えた受験生は、人工知能(AI)の「躍進」をどう思っているだろうか。
「すげえな。俺より確実に頭いい」の声
「人間らしい上質の知性が問われると信じられていた論述において、優秀とされる人間が機械を下回ったことは衝撃でした」。国立情報学研究所(NII)が進めるプロジェクト「ロボットは東大に入れるか」のリーダーを務める新井紀子教授はJ-CASTニュースの取材にこう答える。東ロボくんは、人工知能の限界を調べる同プロジェクトのために作られたロボットで、2021年までの東大合格が目標だ。
2015年11月14日に発表された東ロボくんの最新模試結果は、人間を驚かせるに十分なものだった。東ロボくんは15年6月にベネッセコーポレーションのセンター式模試「進研模試 総合学力マーク模試・6月」を受験。5教科8科目の合計点で、全国平均416点を大きく上回る511点(偏差値57.8)を取った。
国語や英語、物理は偏差値50以下とふるわなかったものの、数学ⅠAは偏差値64.0、ⅡBは同65.8、世界史Bは同66.5と優秀な成績を収めた。前回14年に受験した代々木ゼミナール模試の結果が偏差値47.3だったことを考えると、大きな進歩と言える。
33の国立大学にある39学部64学科、441の私立大学にある1055学部2406学科で合格率80%以上のA判定を獲得。早稲田大や慶応義塾大といった難関私大の合格率も60%以上だった。順位も全受験者数11万6000人中2万5343位と、難関大学を狙える位置につけている。
また、2次試験を想定した駿台予備学校の論述式模試「東大入試実戦模試」にも初挑戦し、世界史は偏差値54.1と平均以上だった。
受験勉強や大学入試は「人間にしかできないものではない」
こうした結果が報じられると、ツイッターには、
「いずれ生身の学生は不要になったりして」
「すげえな。俺より確実に頭いい」
「ここまで成長してたのか...」
と驚きの声が相次いだ。
一体なぜ、ここまで成績を伸ばしたのか。前出の新井教授は「前回模試で点数の低かった世界史と数学の『むら』をなくしたため」と語る。前回の模試以降、過去問などのプログラムを最先端のAI技術で試すベンチマーク(試験)を繰り返した。そのことが今回の成績に影響しているようだ。
とはいえ、過去に偏差値50を上回ったにもかかわらず今回成績が伸び悩んだ科目もある。そこは「ベンチマークと、人間が想定する問題空間との間に未だ乖離があると考えられます」と新井教授は分析する。
テストの回答能力で人間を超える人口知能。受験勉強や大学入試は果たして「人にしかできないもの」なのか。そんな疑問を新井教授にぶつけてみたところ、駿台の論述式模試で、世界史大論述の得点が9点だった(配点26点で平均4.3点)ことに触れ、「データから見ると、そうは思えません」と断言した。