中国・上海市の総合商業グループ、上海豫園旅游商城が、北海道のパウダースノーで有名なスキーリゾート「星野リゾート トマム」を買収する。
日本観光ブームを背景に中国勢の進出が活発化しているが、なかでも北海道は訪れる中国人客が多いこともあり、道内のあちらこちらで不動産などを「爆買い」するようすが伝えられている。なぜ、中国人は北海道が好きなのか――。
星野リゾート買収、「突然のことで驚いています」
観光庁によると、2015年7~9月期の訪日外国人の旅行消費額は、全体で1兆9億円と前年同期と比べて81.8%増えた。このうち、中国人客の旅行消費額は4660億円と、全体のじつに46.6%を占めていた。中国と、台湾の1389億円(構成比13.9%)、香港の800億円(同8.0%)がトップ3だ。
また、訪日外国客数は前年同期に比べて53.7%増の535万人。このうち、中国人客は166万人、31.0%を占めた。中国人客の北海道への訪問率は、8.7%。観光庁は「全体的にみると、ゴールデンルート(東京~富士山~京都~大阪)を訪ねる人が多いので、地方を訪れる人は訪問率でみると少なくみえますが、北海道は沖縄とともに、地方のみを訪れる中国人客の2割超を占める人気エリアです」と説明する。
そんな北海道で、中国企業がパウダースノーで有名なスキー場や、ホテルやゴルフ場を抱える、日本を代表する総合リゾートの「星野リゾート トマム」を買収することが、2015年11月11日にわかった。増え続ける外国人客を呼び込んでいく。
星野リゾート トマムは、これまで星野リゾートが海外の投資ファンドとともに株式を取得していた。その株式100%を中国の上海豫園旅游商城が183億円で取得する。
豫園旅游は、民営の複合企業である復星集団(上海市)に属し、上海の有名庭園「豫園」周辺の大型商業施設を管理するほか、飲食や医薬、不動産業などを営む。ただ、買収後の運営は引き続き星野リゾートがあたるという。
星野リゾート トマムの買収について、北海道観光局は「突然のことで正直驚いています。中国企業による、これだけ大きな投資案件はおそらく道内では初めてではないでしょうか」と話す。
じつは、北海道では2015年7月にも東京の中国系企業「らいしんほう」が10年に廃業したトーヤ温泉ホテル(洞爺湖町洞爺湖温泉、旧洞爺湖温泉ホテル)の土地、建物を買収したばかり。同社は購入額や目的を明らかにしていないが、営業再開を目指しているとされる。
道内にはこうした物件がまだ残っており、それらを中国人が物色しているとの情報は少なくない。道観光局は「中国人による不動産の取得は報道で知ることが多く、すべてを把握しているわけではありません」としたうえで、ただ、「中国人が北海道に興味をもっていることは確かです」と話す。
中国人客、「雪」を求め、冬の北海道に殺到!
とはいえ、中国人はどうして北海道が好きなのだろう――。たしかに雪と温泉、雄大な景色、グルメにスキーやスノーボードなどのウインタースポーツと、北海道は魅力にあふれている。
そんな中で、北海道観光局は「やはり、雪です」と言い切る。「おそらく星野リゾートもパウダースノーを求め、なかでもスキーを楽しみたいという中国人の集客を見込んでいるのだと思います」と推察する。
道観光局が、訪れる中国人客の宿泊日数を調べたところ、2月の宿泊日数が年間の22.5%(2014年)を占めたという。2月は札幌の雪まつりをはじめ、「旭川冬まつり」や「支笏湖氷濤まつり」「層雲峡氷瀑まつり」などの雪まつりが道内各地で開かれる。それもあって冬に3分の1が集中しているという。
一方、「スキーを楽しみたい」と訪れる中国人も少なくない。パウダースノーを求めて北海道を訪れるスキーヤーといえば、豪州からの観光客が思い浮かべるが、「豪州のスキーヤーは経験者ばかり。自国のオフシーズンときに来日してスキーを楽しむ人が多いのですが、中国人の方は初心者が多いんです。やってみたいスポーツの一つなのだと思います」と、道観光局は分析。2022年の中国・北京冬季五輪が開かれることもあって、現地では人気が上がっているスポーツなのかもしれない。
広大な大地に広がる富良野のラベンダー畑も中国では見られない光景として人気。7月に富良野を訪れる中国人客は多い。道内をめぐって、札幌に行けば百貨店や家電量販店もそろっていて、文字どおりの「爆買い」にも不自由しないのも人気の秘密らしい。