サッと食べてさっさと帰る、忙しいサラリーマンの強い味方の「立ち食いそば」。最近、吉野家が始めて話題になっている「ちょい呑み」に、今度は「名代 富士そば」を展開するダイタンフードが参入した。「ちょい呑み」をはじめたところ、売り上げが1割強アップしているという。
角ハイボール280円、「天ぬき」110円から
和製のファストフードともいえる「立ち食いそば」。そのチェーンの一つ、「名代 富士そば」が2015年7月から、一部の店舗で「ふじ酒場」を展開している。
富士そばは首都圏などに100か店超を出店。海外にも進出しているが、そのうち「ふじ酒場」を展開しているのは、高円寺店のほか、西荻窪店や大山ハッピーロード店、十条店などのまだ10か店ほど。9月6日には、新たに人形町店と新橋店でも始めた。
富士そばは24時間営業が売りものだが、「ふじ酒場」(高円寺店の場合)は、15~5時の間でサービスを提供している。もちろん、お通し代やテーブルチャージはつかないし、そばメニューだけでの利用も可能だ。
メニューは、生ビール(ザ・プレミアム・モルツ)や角ハイボールが280円。2杯目以降は200円というサービス価格で提供。おつまみは、板わさや玉子焼きなどのほか、天ぷらそばからそばを抜いた「天ぬき」と呼ばれるオリジナルのメニューもある。「天ぬき」は、通常はそばにトッピングするかき揚げやちくわ天、春菊天、いか天などが同じ値段の110~130円の格安で食べられる。天ぷらは小皿に載せられ、そばつゆをほんのちょっとかけてある。
セットメニューの「ちょい呑みセット」は、生ビールに枝豆と玉子焼きで580円ぽっきり。いかにも蕎麦店らしい献立だ。
「ふじ酒場」はサービス時間帯やおつまみメニューなどが各店舗で異なる。ダイタンフーズは、「ふだんのそばメニューもそうなのですが、各店舗が立地や来店客の属性などを判断して、アイデアを出しながら運営しています」という。
たとえば、今のところビジネス街周辺で「ふじ酒場」を展開する予定はなく、またメニューも西荻窪店の「ふじ酒場」にはセットメニューしかなく、「天ぬき」は提供していない。
同社は、「じつはこれまでもビールは24時間、そばメニューとともに提供していたんです」と明かす。ただ、「ふじ酒場」と銘打って、「ちょい呑み」を提供したのは初めてで、「1号店の高円寺店は店内改装に伴い椅子席を増やすなど、お酒を飲んでいる人にも、そばを食べる人にも配慮したつくりになっています。(高円寺店では)来店客も増えていて、他店でも工夫しながら広げていきたいですが、まだまだ試行の状況です」と話している。
競争激化で、ついに「ファミ飲み」も登場
「立ち食いそば」というと、手間をかけない茹で麺などを使うイメージがあるかもしれないが、富士そばでは一般の蕎麦店と同じように、茹でたあとに水で洗って「そばをしめる」という手間をかけることで、おいしい生そばを提供。また、2014年からは特製のフライヤーを導入(一部の店舗を除く)して天ぷらを店内で揚げるように変えたことで、油を軽減したヘルシーな天ぷらを提供している。
最近は、椅子席を設け、女性にも入りやすく、ゆっくり食べられるようにしている。サラリーマンが多く利用する「立ち食いそば」業界も、売り上げを伸ばすには新しいお客を取り込んでいく必要があるわけだ。
とはいえ、「立ち食いそば」はお客の回転率のよさが生命線ともいえる。「ちょい呑み」は一人あたりの単価はアップするだろうが、その回転率が落ちる可能性がある。
ダイタンフーズは、「『ちょい呑み』が人気になれば、おのずと回転率が落ちてくると考えています。ただ、客数も増えていますし、多くのお客様に利用していただくことで売り上げを伸ばしていきたいと考えています」と説明。一方で、「利益率を上げていくのが課題です」ともいう。
「ちょい呑み」は、牛丼チェーンの吉野家が「吉呑み」をはじめたのをきっかけに、他の牛丼チェーンや天丼チェーン、中華料理チェーンが追随。最近はファミリーレストランで酒を飲む「ファミ呑み」まで登場して、ますます、競争が激しくなっている。