「酷似問題」に揺れる2020年東京五輪公式エンブレムを手がけたアートディレクターの佐野研二郎氏(43)に、新たな「疑惑」が浮上してしまった。
大会組織委員会が2015年8月28日の記者会見で公開した佐野氏のデザイン原案についても、インターネット上で「パクリではないか」との指摘が相次いでいるのだ。
タイポグラフィの巨匠の展覧会ロゴに似てる?
現在使用されている公式エンブレムは、コンペで選ばれたデザインを佐野氏自らが修正して完成させたもの。当初の案は現行デザインよりも直線的で、アルファベットの「T」を強調したデザインだった。赤い円も現在の右上ではなく右下に配置されており、「酷似」が指摘されているベルギーの劇場ロゴのような「L」を想起させるものではなかった。
ところが商標調査の段階で「ある国のある会社が登録している商標」に若干似ていることが分かったため、組織委が佐野氏に修正を依頼。原案から2度の修正を経て、最終的に現在のデザインにたどり着いたという。
組織委は会見で「(劇場ロゴとは)デザインプロセスも発想も全く違う」と強調し、佐野氏案が持つオリジナリティーに理解を求めた。
だが、盗作疑惑を払しょくするはずの会見がきっかけとなり、インターネット上では新たな「火種」がくすぶり始めてしまった。会見で公開された原案についても「パクリではないか」との指摘が続出しているのだ。
「元ネタ」とされているのは、2013年11月に東京・銀座のギャラリーで開催されたタイポグラフィの巨匠、ヤン・チヒョルト氏の展覧会で使用されたロゴ。色は異なるが、佐野氏の原案と同じく長方形と2つの三角、円という構成で、それぞれ同じ位置に配置されている。
もっともアルファベットをベースにしたものや、図形を組み合わせただけのシンプルなデザインならば、偶然似寄ることもままあるだろう。
しかしネット上の「調査団」たちは、佐野氏の事務所「MR_DESIGN」のツイッターアカウント(5月に退会)が開催期間中に「いまのgggのヤン・チヒョルトもやばい」(編注:gggは展覧会開催ギャラリーの略称)とツイートしていたことを探り出した。これをもとに、佐野氏の原案を批判している。もっともこれだけでは間違えのない「証拠」とはいえない。