警備サービス業最大手のセコムが痴漢に関する注意をツイッターで呼びかけたところ、大反発を招き、内容の一部を修正、謝罪した。
ツイッターは、男性が女性の体に触ることだけが痴漢行為ではないとして、匂いを嗅いだり、かばんを女性の体に押し付けても「女性が不快に思えば痴漢になる」と警告した。
「女性が気に食わないと思った奴全員痴漢にできんじゃねぇか」
セコムは公式ツイッターで連日、防犯や災害に関するトピックスを掲載し、「安全・安心」な生活に役立つ情報を提供し続けている。2015年8月20日には痴漢に関する注意を呼びかけたが、これが反発を招くことになってしまった。その中身は、
「痴漢に新手の行為が出現。匂い嗅ぎ痴漢、密着痴漢と呼ばれ、混んでいるのを理由に体には触らないがギリギリまで接近し女性の匂いを嗅ぐ行為。直接触らないでかばんを女性の体に押しつけても、女性が不快に思えば痴漢。満員電車やエレベーター、エスカレーターもご注意を」
というものだった。ネットでは「女性に触らなくても痴漢」「女性が不快に思えば痴漢」という部分に大きく反応し、
「こんなん痴漢にされたら、もう女性が気に食わないと思った奴全員痴漢にできんじゃねぇか」
「もう満員電車は痴漢行為のオンパレードだな」
「痴漢冤罪の被害から男性を守るためのセキュリティサービスでも展開されたらどうですかね?」
などといった意見が噴出した。反響の大きさに驚いたセコムは、
「先ほどの痴漢のツイートについて補足修正します。『女性が不快と思えば痴漢』は『女性が不快と思えば痴漢に疑われることもあります』と言いたかったものです。男性が冤罪に疑われることのないようご注意くださいというのが言いたいことでした。言葉足らずでお詫びします」
などと謝罪した。しかし、この補足修正にも「勝手に痴漢の定義を増やすの辞めてください」などと反発する人もいた。本当はどうなのか。専門家に聞いてみた。
匂いを嗅いだりするだけでも「痴漢となる可能性があります」
アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士は、体に触らなくても匂いを嗅いだり、カバンを押し付けたりした場合でも「痴漢となる可能性があります」と説明した。東京都迷惑防止条例では、
(1)人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、(2)公共の場所又は公共の乗物において、(3)卑わいな言動をする、ことが禁止されている。
卑わいな言動とは、いやらしくみだらな言語、人に性的しゅう恥心、嫌悪感を覚えさせ、又は不安を覚えさせる動作をいい、かなり広く認められる余地があるからだという。
ただし、女性が不快と思えば痴漢になるかというと、そう簡単ではなく、「女性が不快に思っただけで直ちに痴漢となるわけではありません。迷惑防止条例違反となるか否かは、女性が実際に『恥ずかしい』と感じたかではなく、一般人であれば、羞恥心や嫌悪感を感じるような行動をしたか否かを客観的に判断します」ということだそうだ。
東京都の条例に違反した場合の罰則は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」と定められていて、事案ごとの悪質性などを考慮した上で、裁判所が最終的に量刑を判断する。匂いを嗅ぐ行為やカバンを押し付けられる行為は、直接おしりなどを触る行為より嫌悪感、羞恥心は低いと考えられるため、よくある痴漢よりは低い量刑が出る可能性があるという。