中国のSNS「微博(ウェイボー)」で、元国家主席である江沢民氏の名前が検索できない状態が続いている。
いつごろから起きていて、何が原因なのかはっきりしていない。ただ、まったく真偽不明ではあるものの一部中国語メディアが「習近平指導部が江氏の身柄を拘束した」と報じ、このことが影響している可能性がある。
「法律と政策により、『江沢民』の検索結果は表示できません」
2015年8月24日17時現在、微博の検索ボックスに「江沢民」と入力すると、
「法律と政策により、『江沢民』の検索結果は表示できません」
というメッセージが表示される。この状態は遅くとも8月23日夜から続いている。
検索エンジンにも制限がかかっていて、最大手の「百度(バイドゥ)」の場合、「一部の検索結果が表示できません」というメッセージが出てくる。プロフィールや人民日報の記事など、党公式のサイトばかりが表示されている。
中国では、あるキーワードがネット検索できなくなることは決してめずらしくはない。これまでも汚職事件に関連する政府高官や国有企業、党大会直前に処遇がうわさされる幹部の名前が検索できなくなることはあった。
ただ、今回のように「政治の季節」でもないのに、元国家主席である江沢民氏の名前自体が規制対象になっているのは極めて異例だ。
背景には何があったのか。影響があったとみられているのは、ニューヨークに本部を置く中国系メディア「大紀元」の報道だ。同紙は2015年8月12日深夜に起きた「天津爆発事故」を単なる事故ではなく、「江沢民派」が習近平指導部に対して仕掛けた政治闘争だと報じたのだ。
江氏が連行されている?画像が拡散
習氏は党のトップに立って以来、「虎もハエも叩く」として腐敗問題に取り組んできた。取り締まり対象には江沢民派とされる人物も含まれ、両氏の対立は海外メディアでも大きく取りざたされてきた。
大紀元の記事によると、徐々に追いつめられた江氏が企てたのが、習氏の暗殺だった。当初は8月上旬に河北省で行われた会議から鉄道で戻ってくるところ爆殺しようと画策。しかし情報がもれて計画は失敗、証拠となる爆弾を処理しようとしたのが、天津での事故だったというのだ。
その後、習氏から反撃を受け、江氏は息子とともに拘束。その他の江沢民派メンバーたちも軟禁されたというのが事件のあらましだという。
あくまでこの記事は、消息筋だという人物の証言ばかりで信ぴょう性に疑問はある。また大紀元自体、共産党に弾圧された気功グループ「法輪功」との関係が指摘されていて、これまでも党、とりわけ弾圧を指揮した江氏へ批判的な記事は多い。
ただ、この記事がネットで配信された後、「江沢民氏が拘束された時の様子」とする画像が、中国のネットで出回ったようだ。江氏らしき人物が捜査員と思われる2人に両脇をつかまれているが、コラージュの可能性を含め、真偽はまったく不明だ。
もちろん党や政府は記事に関して一切の声明を出していない。しかし憶測が広まることを懸念してネット検索を制限している可能性はある。