芸能プロダクション大手の吉本興業が、事業の元手となる資本金を約125億円から1億円に減資する。資本金が1億円になれば、税制などで「中小企業」の扱いになる。
「1億円減資」は、2015年5月に経営再建中の家電大手のシャープが中小企業向けの税制優遇を受けようと検討したが、政府などから批判を受けて、大企業とみなされる5億円の減資にとどめた経緯がある。
「取り崩した資本金は中長期的な投資に回す」
吉本興業は「1億円減資」について、「取り崩した資本金を、中長期的な投資に回すのが目的です」と説明している。すでに2015年6月の株主総会で承認されており、9月1日付で実施する予定だ。
しかし、一般的には資本金を取り崩して減資した場合、累積損失の解消に充てるケースが少なくない。業績不振の企業が赤字を続けて累積損失を抱え込んでしまうと、企業は債務超過にならないように、「増資」によって資本を手厚くするか、逆に「減資」によって取り崩した資本金を累積損失に充てることで帳簿から落とす方法がある。
吉本興業は2010年に経営陣などによって、株式の公開買い付け(TOB)を実施。非上場になっているが、15年3月期決算は子会社株の評価損などで特別損失を計上したことなどが響き、純損益は赤字だった。同社の利益剰余金は3月末時点で140億円のマイナスとなっており、資本金から取り崩す約124億円を資本準備金に回して財務体質の改善を図るとみられる。
利益剰余金がマイナスのままでは株主への配当はできなくなるし、企業価値も下がり、資金調達力も後退する。加えて、最近は財務状況の悪化を懸念する声もあり、何らかの手を打たなければ企業にマイナスイメージがつきかねない。
企業アナリストの大関暁夫氏は、「上場の有無にかかわらず、(吉本興業のような)社会的な影響力がある企業には、説明責任があるのではないでしょうか。『減資』から受けるイメージはあまりよくないですから、周囲からいろいろと詮索されるよりは、はっきり説明したほうが、ブランドイメージに傷をつけることもないと思います」と話している。