「原発が弾道ミサイルの攻撃を受けたら、どのぐらい放射性物質が出るのか」。山本太郎参院議員(40)が国会でこんな単刀直入の質問を繰り出して、ネット上で反響を呼んでいる。
山本議員が質問に立ったのは、安保関連法案を審議した2015年7月29日の参院平和安全法制特別委員会だ。
攻撃の被害想定をしていないと政府を非難
「生活の党と山本太郎となかまたち」代表として、山本氏はまず、明らかに憲法違反であり、「戦争参加法制だ」と批判して、法案に反対する立場を表明した。続いて、国際紛争については軍事力でなく外交力で対処すべきだなどと自党の対案を述べた後、政府が差し迫った脅威とする中国、北朝鮮、ロシアが弾道ミサイルなどで攻撃してきたケースについての質問を始めた。
山本氏は、日本がミサイル攻撃を受けたときのシミュレーションや訓練を政府が行っていることを確認したうえで、鹿児島県の川内原発について、最大でどのぐらいの放射性物質放出を想定しているかをただした。
これに対し、原子力規制委員会の田中俊一委員長が、原発へのミサイル攻撃の事態は想定しておらず、事故が起きたときに福島第一原発の事故の1000分の1以下の放射性セシウムが放出される想定だと答弁すると、山本氏は、怒りを露わにした。
「要はシミュレーションしていないんだ」「あまりにも酷くないですか、これ」
今度は、安倍晋三首相がその理由を述べ、攻撃の手段や規模、パターンが事態によって異なるとして、「実際に発生する被害も様々であり、一概にお答えすることは難しい」とした。
すると、山本氏は、待っていましたとばかりに激しく反論した。
「でも、考えてみて下さい。今回の法案、中身、仮定や想定を元にされてないですか?」「都合のいいときだけ想定や仮定を連発しておいて、国防上ターゲットになりうる核施設に関しての想定、仮定できかねますって、これどんだけご都合主義ですか」
「いい質問だ」「意味不明」と賛否両論に
さらに、山本太郎氏は、原発が弾道ミサイル攻撃を受けたとき、何キロ圏までの避難・防災計画を作るべきなのかとただした。政府側は、定量的な被害想定をしておらず、事態の推移を見て避難などの範囲を決めると説明したが、山本氏は、また怒りを爆発させた。
「こんないい加減な話あるかよって。誰の税金で食べて、誰のお金でこの国会が成り立っていって、そして霞が関も、そして永田町もやっていけてるんだって」
「ミサイルもしもそれが着弾した後の最悪のパターンっていうものを考えていないんですか。呆れて物も言えない」
最後に、山本氏は、川内原発から最大でどのぐらいの放射性物質放出があるのかを重ねて聞いた。田中俊一委員長が放射性物質は燃焼度や冷却期間などで変わるため全部が放出されることは想定していないと答えると、山本氏は、「これね、再稼働なんてできるはずないんですよ、川内原発」と強く非難した。
安倍首相が原子力規制委で安全基準を満たしたものは再稼働する方針だと述べると、山本氏は、「規制委員会への責任転嫁」だと断じて質問を締めくくった。
この質問攻勢はNHKなどでも中継され、ネット上で話題になった。
ツイッターや山本氏のフェイスブックには、賛辞も相次いでおり、「分かりやすくていい質問!」「国防上の弱点を指摘したものでみごとだ」「そもそも原発を抱えて戦争なんてあり得ない」といった声が書き込まれた。
一方、山本氏への異論も出ており、「だからミサイル撃たせないように安保が必要なんだろ」「無限大に危機を想定しろと言っている」「意味がわからん やられるまえにやれってこと?」といった指摘もあった。