「18歳選挙権」、教育現場では困惑も 「政治的中立」とのかねあいに悩む

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   選挙権年齢を「18歳以上」に引き上げる改正公職選挙法が2015年6月、公布された。70年ぶりの制度改正で、若者の政治参加の広がりに期待が高まっている。

   だが、政治参加を促す「主権者教育」のあり方などについて教育現場では困惑も出ている。

  • 教育現場における政治的中立の確保はどうなるのか(画像はイメージ)
    教育現場における政治的中立の確保はどうなるのか(画像はイメージ)
  • 教育現場における政治的中立の確保はどうなるのか(画像はイメージ)

自民は「教員の政治活動の制限」

「自民党の主張はこうで、民主党の主張はこうだ、なんて具体的な話はできないでしょ。投票に向かうよう、きちんと教育しろといわれても、簡単ではないですよ」

   公立学校のある教員はそう話す。「政治的中立性」が求められる教員らにとって、授業で選挙や政治を教えることは容易ではないという。

   実際、政府や自民党は学校現場での政治的中立の確保に神経をとがらせている。自民党文部科学部会は7月初旬、学校教育のあり方に関する提言をまとめ、教職員の政治的中立を確保するため、高校教員の政治活動を制限し、違反した場合には罰則を科すよう求めた。政治の責任は「学校に政治的イデオロギーが持ち込まれたり、政治闘争の場になって混乱したりすることを断固として避けること」ことだと訴えている。

   政治学者らによれば、人の政治的な意識は20代前半までで固まってしまうとされる。例えば、20代前半までに「自民党支持」との意識をもてば、生涯にわたってその意識は変わりにくいというのだ。「自民党は日教組などの影響を警戒している。教育現場での対応を誤れば、若者をはじめ、将来の中高年層へも深く響くためだ」(学校関係者)との見方も強い。

文科省は「通知」の見直しへ

   しかし、一部の高校などでは、18歳選挙権の導入を前に、模擬投票などを催し、生徒が政治や選挙に関心を高めるよう、積極的な取り組みも始まっている。もし、学校を「政治的中立」で縛ってしまえば、若者が政治に関心をもつという、せっかくのきっかけを奪ってしまうことになりかねないとの意見もある。

   6月に開かれた衆院政治倫理・公選法改正特別委員会では、委員から「政治的中立が強調され過ぎ、学校で深い政治教育が行われなかったことが若者の政治離れの要因だ」との声が上がった。「学校で、政治や政策決定の仕組みをきちんと教えてこそ、政治への関心が生まれる」(教育関係者)との声は強い。

   旧文部省は1969年、高校生の政治活動を「望ましくない」とする通知を出し、現在までその態勢は続いている。ただ、18歳選挙権を受け、文部科学省はその内容を今秋にも見直す方針だ。

   18、19歳は全国で約240万人に上り、来年夏の参院選から投票が可能となる。彼らが実際に投票という行動に動き出し、その動きが20代、30代と別の若い世代にも広がるか。学校現場の対応にこそかかっているといえる。

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