建築家の安藤忠雄さんが2015年7月16日に行った記者会見での発言に「まるで他人事」「酷い責任逃れ」などと批判の声が挙がった。
新国立競技場の建設費用が当初1300億円から2520億円に膨れ上がった問題の「犯人探し」が行われる中で、建築費高騰を招くデザインを決定した責任者の安藤さんは、「我々が頼まれたのは約3年前のデザイン案選定まで」「1人の国民として『なんとかならんかな』と思っています」などと語ったからだ。
1300億円の予算だったが1800億円になるかもと思っていた
今回の記者会見は15年7月7日に開かれた日本スポーツ振興センター(JSC)の有識者会議の記者会見に安藤さんが欠席し「逃亡した」などと騒がれたため、単独で開くことになった。有識者会議の記者会見では建設費用が2520億円に膨れ上がった理由について、消費税の増加分や建設資材や労務費の高騰、そしてデザインの特殊性があげられ、構造の根幹である2本の巨大な「キールアーチ」にかかる費用が765億円増えた、などという説明があった。新国立競技場のデザイン選定で審査委員長を務めたのが安藤さんで、このデザインこそが諸悪の根源のような言われ方をしていた。
7月16日の会見で安藤さんはまず、7日の欠席は事前に大阪での講演会の予定が入っていたためだと語った。そして「すべて安藤さんの責任や」と言われているのはおかしな話なので、「何でも聞いてほしい」と記者に語りかけた。
安藤さんによると、新国立競技場の建設に関して頼まれたのは12年11月までで、デザインを選ぶのが仕事だった。デザインを決めた後で形にするまでの相談は受けるつもりだったが、そんなものは一切なかった、とした。
さらに、デザイン選定については、
「ダイナミックで斬新であり、何よりもシンボリックだったから。オリンピック誘致に成功してほしいと思ったからかもしれないし、世界中の人が見る芸術だとも思っているから難しい建築工事を日本ならできることを示したかった」
と説明した。
工事費の高騰には、
「アイデアのコンペだったため図面がきっちりあったわけではないし、徹底したコストの議論にはなっていなかった。私は物価の上昇もあるので基本設計で1700億~1800億円になるかも、と思っていた。建築とはそういうもので、例えば3000万円の予算で家を建てようとすると基本設計で3700万円ぐらいかかると言われることがある。後は調整の問題で、いかに3000万円の予算に近付けるようにするかが普通のやり方だ」
などと語った。