この評判の悪さは安保法制どころではない。2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場のことだ。槙文彦氏ら建築家グループのほか、陸上の為末大さん、ラグビーの平尾剛さんらアスリート、さらにはマスコミの論調も批判一色。
第2次安倍晋三政権成立以来、安保法制を含め政権支持の論調が際立つ「読売」「産経」なども、「かつてないほどの強い言葉使いでケチョンケチョンに批判」(大手紙論説委員)している。もはや、計画を見直すしかないというのが国民的常識のようだ。
朝日は「冷静に立ち止まって考えたい」と比較的穏健だが・・・
新競技場の建設費について、下村博文・文部科学相が当初計画の1300億円、その後の修正計画の1625億円から大幅に膨らみ、2520億円になると明らかにしたのが2015年6月29日。東京都に500億円の負担を求め、舛添要一都知事と激しい言い合いになったことは、J-CASTニュースでも詳報した通りだ。
文科省管轄で建設主体になる日本スポーツ振興センター(JSC)は7月6日に2520億円の内訳を説明し、アーチなど建築の特殊性が原因で765億増えるなどとする数字を示し、有識者会議が7日にこの計画を承認、9日には工事の一部33億円分について大手ゼネコンとの契約も結ぶというように、事態は一気に動き出した。「既成事実を積み上げ、時間切れに持ち込もうとの魂胆」(大手紙運動部デスク)が見え見えだが、政府や日本オリンピック委員会(JOC)などの「身内」や利害関係者以外の間では批判が一気に拡大しているのが現在の状況だ。
とりわけ新聞論調は、第2次安倍内閣発足後でも特筆すべき厳しさだ。
「納得できぬ見切り発車」とする「毎日」6月27日社説は「財源が確保できていない。長期にわたる維持費も膨大だ。......それでも『国際公約』などを理由に見切り発車しようとしている。こんなずさんさでは『国家プロジェクト』の名に値しない」と、バッサリ切り捨て、「このままでは新国立が『負の遺産』になってしまわないか。計画の見直しを改めて求めたい」と明快に求める。
「東京」7月9日社説も「神宮外苑は都心の緑のオアシスである。その歴史や文化の薫りを損ね、景観を壊し、国民に重いつけを回して箱物を造る。かつて繰り返された巨大公共事業の再来のようだ」と批判し、政府に「出直し」の決断を要求。「見切り発車は禍根残す」と題した「朝日」7月6日社説も「後世に残す国民の財産をめぐる議論はまったく尽くされていない」「設計を一から見直す......結果、五輪に的を絞ることで間に合うのならば、ラグビーW杯は別の主会場を検討するべきだ」と、見直しを求める。ただし、「冷静に立ち止まって考えたい」など、言葉使いは比較的穏便だ。