憲法学者の長谷部恭男・早稲田大学法学学術院教授と小林節・慶應義塾大学名誉教授が2015年6月15日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見し、政府が成立を求めている安保関連法案は違憲で、取り下げるべきだと主張した。
法案が成立した場合は、次の選挙で政府を交代させるべきだとも主張。小林氏は、3段階にわたって違憲訴訟を起こす計画も明らかにした。さらに矛先は政治そのものにも向かい、「狂った政治を正すべきだ」「選挙で政権を交代させるべきだ」といった発言まで飛び出した。
「立憲主義の専門家ということで、事務局が私を選んだ」
両氏は6月4日に行われた衆院憲法審査会で、安保法案は違憲だとする意見を表明。長谷部氏は自民、公明の推薦を受けて参考人として意見を述べていたこともあって、自民党内からは「人選ミス」だとの指摘が続出。特に自民党山東派の山東昭子会長は、人選に関わった与党筆頭幹事の船田元・党憲法改正推進本部長らの責任を追及する考えを明らかにしている。
この点について長谷部氏は、
「私が証言をした日の憲法審査会のメインテーマはコンスティテューショナリズム(立憲主義)。コンスティテューショナリズムの専門家ということで、事務局が私を選んだ。それを自民党が受け入れたと私は聞いている」
「質問があれば、私が思っていることを答えるだけだろうと思う」
などと述べた。「立憲主義」というテーマが与えられただけで、それ以外には発言内容に関する注文や指示はなかったという。
法案が成立した場合は、違憲訴訟も
両氏は、法案は違憲で、取り下げるべきだと主張。
「核心的な部分、つまり集団的自衛権の行使を容認している部分が、明らかに憲法違反であり、違憲の他国軍隊の武力行使との自衛隊の活動の一体化、これをもたらす蓋然性が高い」(長谷部氏)
「違憲というのはもちろん、おそろしいのは、憲法違反がまかり通ると、憲法に従って政治を行うというルールがなくなって、北朝鮮みたいな国になってしまう。キム家と安倍家が一緒になっちゃうんで、これは絶対に阻止しなければいけない」(小林氏)
法案が成立した場合は、違憲訴訟も視野に入れる。訴訟は三重県松阪市の山中光茂市長が主導し、小林氏が日弁連と連絡を取りながら弁護団を取りまとめる。具体的には、「法律が有効になった瞬間から、今まで日本になかった戦争の危険、海外で戦争をする危険が具体化する」ため、(1)「『平和に生きる権利』が憲法の前文と9条で保証されている」ことを前提に「違憲行為で平和が傷つけられた」と訴える(2)実際に海外派兵の命令が出た場合、その部隊の一員がそこから逃げ出して懲戒処分を受け、それが違憲無効だと訴える(3)海外派兵で死亡した人がいた場合、遺族が「違憲な戦争で家族が殺された」と訴える、の3段階を予定している。
長谷部氏は、訴訟が起きた場合は最高裁が「違憲・無効」の判断をすることに期待感を示しつつ、選挙で政権を交代させるべきだとした。
「最近、最高裁は変化しつつあるので、今までと違った態度を取る可能性はあると思っている。他方、裁判所に頼りすぎるのもよくない。まず、次の国政選挙で新しい政府を成立させて、いったん成立したこれらの法律を撤回する、元に戻すということを考えるべき」
小林氏も
「ああいう狂ってしまった政治は、次の選挙で倒せばいい」
と述べた。