円安ウォン高の影響で、「安い」とされていた韓国製品と日本製品の価格がとうとう逆転、韓国の輸出企業が窮地に追い込まれる例が出てきたようだ。
ウォンは日本円に対しても高いが、じつはユーロに対しても高い。通貨を安くして輸出を増やす世界的な為替競争で、韓国は追い込まれている。
「本来は日本製のほうが安くて品質がいいのが当たり前」
韓国の代表的な輸出企業、現代自動車や起亜自動車。ほんの3、4年前のウォン安のときには日本のトヨタ自動車やホンダ、日産自動車を抑え、米国市場などで跋扈していた。
ところが、そんな勢いはもう失われている。2015年6月7日付の朝鮮日報日本語版は「韓国製よりも安い日本製出現に韓国輸出企業が悲鳴」の記事中で、「円安にユーロ安も重なり、薄氷のグローバル競争を展開する自動車、造船、鉄鋼分野は相次いで不利な立場に立たされている」と報じた。
現代自動車と起亜自動車は、2015年第1四半期(1~3月期)の販売台数が前年同期と比べて、それぞれ3.6%減、2.7%減となり、トヨタやホンダ、ドイツのダイムラーやBMW、フォルクスワーゲンを含む主要11のメーカーの中ではそれぞれ11位、10位と、事実上の最下位だったというのだ。それに伴い、収益も低下。産業研究院(KIET)のイ・ハング上級研究委員の証言によると、「現代自と起亜自の不振は新車の発売競争と燃費競争に敗れたこともさることながら、ユーロ安、円安で価格競争力を失っていることが最大の要因」とみている。
たしかに、円安ウォン高の影響は大きい。円ウォン相場は、リーマン・ショック前の2007年には100円=800ウォン台で推移したが、09年には1100ウォン台、さらに12年には1500ウォン前後まで円高ウォン安が進んだ。
それがアベノミクスによって、13年4月には1130ウォンまで円安ウォン高が進み、2015年6月10日現在では100円=899ウォンと、2007年頃の水準近くに逆戻りした。
また、円ドル相場が2007年の1ドル=115円前後から一気に75円台の超円高となったが、それが現在はもとに戻ったことも周知のとおり。さらに、1ドル=125円近辺にまで円安が進行中だ。
こうした為替相場の動きから、かつてウォン安のときに現代自動車などの韓国企業が価格競争力を生かして日本企業から奪い取ったシェアを、これから日本企業が奪い返したとしても、なんら不思議はない。
日本のインターネットには、
「日本の技術や資材を輸入してつくってるだけなんだから、本来は日本製のほうが安くて品質がいいのが当たり前」
「性能では日本に敵わず、価格では中国に敵わないのに、価格でさえ日本製のほうが安くなりはじめたら、もうダメでしょ」
「日本も円高でも創意工夫して努力してきた企業だけが残った。『円安だからダメ』『円安は悪』って言って終わってるような国はダメで当然」
といった、韓国への厳しい声が寄せられている。
鉄鋼や化学など素材はすでに逆転、ウォン高になるほど日本優位
韓国製品と日本製品の価格について、新興国経済に詳しい、ニッセイ基礎研究所経済研究部の斉藤誠研究員は「鉄鋼や化学、繊維といった中間財(素材)はすでに逆転しているようですよ」と指摘する。「たとえば高機能素材にみられるような、もともと品質のよい、日本の競争力が高い分野では為替変動に関係なく日本製が優位にあります。鉄鋼や繊維などがそれで、ウォン高になるほど日本に優位に働きます」と話す。
朝鮮日報日本版(2015年6月7日付)でも、ある繊維業界の関係者が「日本製が韓国製よりも安いという状況は想像もできなかったこと」と証言している。
半面、韓国製でも「半導体や電機はウォン高でも、まだまだ韓国の価格競争力が高い分野です」と、斉藤氏はいう。
じつはウォン安を背景に急成長した自動車産業も、日本向けの輸出ではまだ優位にあるようだ。自動車部品工業会調べでは、日本製の自動車部品の韓国向け輸出は2014年に955億円だったのに対して、韓国製の輸入は2倍超の2169億円にのぼった。
ニッセイ基礎研究所の斉藤氏は「自動車部品はここ2、3年で日本製とほぼ対等のコストパフォーマンスにあります」と話す。円高時代に、日本のメーカーなどが工場や技術を移して逆輸入した「なごり」もある。
もっとも、日本政策投資銀行によると、「自動車部品については、2014年半ばから、韓国からの輸入が減り、日本製の輸出が増えつつあります」という。自動車部品における、韓国製から日本製への切り替えはむしろ、これからが本番なのかもしれない。