「お客様の中に警察官はいらっしゃいますか?」 事件発生の電車内で響いた珍しいアナウンス

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   「男が包丁を持って暴れている」。2015年6月9日15時頃、JR京浜東北線鶴見~新子安駅間を走行中の大宮発大船行きの普通電車で、乗客から110番通報があった。偶然居合わせた非番の神奈川県警鶴見署員が取り押さえ、住所不定、職業不詳の男(71)を銃刀法違反で現行犯逮捕。ケガ人はいなかった。

   突然の事態に騒然とする車内では、「お客様の中に警察官はいらっしゃいますか?」という聞き慣れないアナウンスが流れていた。

  • たまたま乗っていた警察官に助けられる
    たまたま乗っていた警察官に助けられる
  • たまたま乗っていた警察官に助けられる

アナウンスは確かに「流れた」

   各種報道によると、優先席に座る男が隣でタブレット端末を使っていた50代男性に「優先席でタブレット使ってんじゃねえよ」などと抗議し、口論に発展した。その後、男は持っていた紙袋から包丁を取り出して振り回した。乗り合わせた乗客が非常用ドアコックでドアを開け、電車は緊急停車。一部の乗客は線路に降りるなどして避難した。騒動の影響で京浜東北線、東海道線、横須賀線が一時運転を見合わせている。

   一方、同時間帯にツイッターで確認できた「現地報告」によると、車内では「お客様の中に警察官はいますか」とのアナウンスが流れたという。聞き慣れない文言だったためか、「すごい車内放送だな」「ナニコレ」などさまざまな感想が寄せられた。

   実際、そのようなアナウンスは車内で流れたのか。JR東日本横浜支社はJ-CASTニュースの取材に対し、流れたことを認めた。ただ、マニュアル等では定めておらず、あくまでも乗務員が「機転を利かせて」放送しただけだという。警察との間に特段取り決めはなく、警察官の「完全な善意」に助けられたと話す。今回はたまたま警察官が乗車していたため素早く対応できた、というわけだ。

   同社担当者は、事件性のあるもの以外でもトラブル時に乗務員が乗客に協力を求める場合があると明かす。理由は、運行時の車両には乗客以外運転手と車掌しかおらず、トラブル対応の範囲も限られてくるため。例えば「お客様が急病で倒れた」というパターン。乗り合わせている医師に協力を求める可能性もあるという。

関東私鉄各社「そのようなマニュアルはない」

   トラブル時、車内アナウンスで乗り合わせた警察官に協力を仰ぐ――私鉄には、そんな規定はあるのだろうか。関東の私鉄8社に問い合わせたところ、JR東同様、いずれも「無い」との回答だった。各社「ケースバイケース」「臨機応変な対応が必要」としながらも、やはりそういった事例は予め想定していないようだ。中には「乗務員が車内で警察官を呼ぶというのは未だかつて事例が無い」と答えた社もあった。

   トラブル発生時には、まず乗務員が無線を通じて運転指令所へ連絡、車両を近隣駅に停車させた後、対応するといった流れが基本。どうやら、今回の京浜東北線の事例は非常にイレギュラーな部類となるようだ。

   調べた限りでは、日本での同じような事例は確認できなかった。一方、海外では15年4月に似たような事例が報告されている。観光のため米ニューヨークへやって来たスウェーデンの警察官4人が地下鉄に乗ったところ、なんと車内で暴行事件が発生。車掌が「誰か警察官はいませんか?」とのアナウンスを流したため、4人はニューヨークの警察官が到着するまで容疑者を取り押さえて事件の深刻化を防いだという。その模様を撮影していた乗客がYouTubeへ動画を投稿すると、瞬く間に「いい話」として世界から注目された。

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