自民、公明両党による与党税制協議会が、生活必需品の消費税率を低くする軽減税率の対象品目の選定をめぐって頭を悩ませている。
どんな食品を対象にするかの議論が進んでいるが、例えば生鮮食品を対象にした場合、カットレタスは生鮮食品の扱いになって税金が安くなるが、ミックスサラダは加工食品に分類されて軽減税率の対象外になるなど、線引きが非常に複雑だからだ。与党は今秋のとりまとめを目指しているが、議論は難航しそうだ。
「精米だけ」「生鮮食品」「酒を除く飲食料品」の3案
所得の多い、少ないに関わらず一律に負担する消費税は、所得が低いほど負担感が重くなる「逆進性」が指摘され、欧州などでは食品など生活必需品の税率が低く設定されている。日本でも、逆進性を緩和するため、与党が消費税率10%への引き上げ後に軽減税率を導入することで合意。対象品目や具体的な導入時期などの検討を進めている。
与党はまず、食品の対象品目の議論に着手し、代表的な事例として「精米だけ」「生鮮食品」「酒を除く飲食料品」の3試案の検討に入った。精米だけを対象にした場合と、「酒を除く飲食料品」を対象にした場合は、線引きが簡単だ。
ただ、精米だけ税率を8%に据え置いても、財務省の試算では平均年収176万円の低所得世帯で年間290円しか負担が軽減されない。一方、酒を除く飲食料品を対象にすれば、同世帯で年間8470円の負担軽減になるが、国全体で年間1.3兆円の税収が減ってしまう。代わりの財源を見つけるのは至難の業で、麻生太郎財務相は「ケタがデカすぎる。財源が埋まらない限り難しい」との立場だ。
それでは「生鮮食品」を軸に検討を進めればよいかというと、これも簡単ではない。何を生鮮食品とするのか、線引きが難しいからだ。一から十まで法律に書きこむのは膨大な手間と時間がかかり、現実的ではないため、食品表示法に基づいて生鮮食品と加工食品を分類する方法が有力になる。
焼き肉用の肉盛り合わせは加工食品?
しかし、食品表示法は野菜や魚を切り分けただけであれば「生鮮食品」とみなすが、味付けをしたり、複数の生鮮食品を盛りつけたりすれば「加工食品」と扱う。この分類に従えば、松坂牛のステーキ肉は生鮮食品で税率が低くなるが、焼き肉用の肉盛り合わせは加工食品で通常の税率となる。同じことがマグロの刺身と「お刺身3点盛りパック」、牛挽肉と合い挽き肉などにも当てはまり、与党税制協議会の検討委員会では「分かりづらい」との声が相次いだ。
現実問題として、一人暮らしの高齢者や低所得世帯は、総菜や弁当などの加工食品を購入して食事を済ませることも多い。与党からは「生鮮食品だけを対象にするのは不十分」との意見も出ている。また、松坂牛など高級品も対象となるため、高所得者の方がむしろ恩恵が大きくなることを問題視する声もある。
与党は今後も議論を続け、今秋に最終案をとりまとめることを目指している。ただ、対象品目の選定に加え、具体的な導入時期や税収が減る分の穴埋め策など論点は多く、関係者の頭を悩ませる日が続くことになる。