宗教団体「幸福の科学」の大川隆法総裁の長女(24)が、お茶の水女子大の卒業論文で「無断引用」を指摘されていたことが分かった。しかし、学士については処分規定がなく、学位は取り消されないという。
大川隆法総裁の長女は、2013年3月に文教育学部を卒業し、現在は幸福の科学の専務理事兼総裁室長を務めている。
無断引用された大学教授「対応を考えたい」
無断引用が発覚したのは、卒論を収録した著書「神国日本の精神」(幸福の科学出版刊)を卒業と同時に出版したことがきっかけだった。卒論は、「明治憲法の制定と信教の自由」というタイトルが付けられていた。
お茶の水女子大の広報担当課によると、著書の初版本を読んだ人から15年1月になって指摘があり、大学では調査委員会を設置して卒論を精査した。その結果、4人の著作や論文から段落ごと計22か所で無断引用があり、全体の3分の2ほどにわたっていた。著作や論文は、参考文献にも挙げられていなかった。指導教授は、無断引用を見落とし、長女の卒論に最高評価を付けていた。
これを受けて、お茶女大では、指導教授を文書で厳重注意処分にするとともに、6月3日になって長女の名前を伏せて報道発表した。
無断引用については、週刊新潮の4日発売号も報じた。
東京都内の私立大学教授は、1990年の論文で4か所を無断引用されており、新潮の取材に対し、「断りもなくここまで使うのは問題」だとした。そのうえで、「盗用されたことについて、対応を考えたい」と話したという。
都内の別の私立大学准教授は、06年の著書で8か所を無断引用されているが、J-CASTニュースの取材に対し、「初耳です」と驚いた様子を見せた。そのうえで、「盗用は大問題ですが、実際に卒論を見ていませんので、何ともコメントできないです」と答えた。
最近は、ネット検索をすれば学生のコピペが分かることが多いともされているが、お茶女大の指導教授は、なぜ無断引用を見抜けなかったのか。
処分規定がなく、学位は取り消されない
この点について、お茶女大の広報担当課では、次のように説明する。
「教授は、宗教については専門外でしたが、1つだけ読んだことがあると言っていました。事情聴取に対し、『卒論が似ていると記憶にあった気がする』と答えましたが、『お茶の水の学生が盗用をするはずがない』との思い込みがあったということです」
卒論を書いた本人には、故意にやったことなのか、それとも参考文献に挙げるなどを忘れていただけなのかを聞こうと連絡を取った。しかし、忙しくて行かれないため、代理人の弁護士を行かせるとしたが、大学では、本人でないとダメだとしてそれを拒否した。
学則には、学士の学位返還規定はないため、学位を取り消すことはできなかった。しかし、今後については、学位取り消しを含めて学則の見直しなどを学内で検討していると説明している。
幸福の科学グループの広報局では、取材に対し、次のようにコメントした。
「お茶の水女子大学からは何の指摘もありませんし、大学の卒論指導・審査に関することは、コメントする立場にありません。なお、『神国日本の精神』については、近代日本の宗教的限界に鋭く迫った独創性に富んだ内容であり、出版にあたり引用・注を付けておりますので、問題はありません」
ただ、初版本に収録された卒論には、4人の論文や著作が参考文献にはなかった。14年8月に出された第2刷には、修正したことは触れていなかったが、どこからか指摘があったのか、うち3人の分が参考文献に挙げられていた。さらに、15年6月2日の第3刷には、4人分すべてが参考文献に挙げられていた。
この点については、「書籍増刷時の修正箇所等についてはお答えしておりません」としている。