2015年5月28日の衆院特別委員会で、安倍晋三首相がまたしてもヤジを飛ばし、陳謝に追い込まれた。首相は2月の衆院予算委員会でも「日教組どうすんだ?」などとヤジを言って謝罪したばかりだ。
前日、自身へのヤジに「議論の妨害はやめていただきたい」と言っていただけに、野党は「政治家、総理大臣として以前に人としていかがなものか」と反発を強めている。
「早く質問しろよ!」
安倍首相は安全保障関連法案を審議する衆院特別委員会で、質問に立った民主党の辻元清美議員に対し、「早く質問しろよ!」とヤジを飛ばした。野党側が「なんだ、そのヤジは!」と反発し、一時審議がストップした。
結局その後、追及を受けて、
「自説を述べて質問をしないのなら、答弁をする機会を与えないということだから『早く質問をしたらどうだ』と言った。言葉が少し強かったとすれば、お詫び申し上げたい」
と陳謝した。
首相の言い分だと、辻元氏が1人で延々と話していたようだが、実際はそうではない。中谷元防衛相の答弁を受け、3分あまり話している最中に首相がヤジを飛したのだ。首相の釈明が原因かは分からないが、ツイッターには「辻元が30分以上演説し、総理がいらだった」とするデマが流れる騒ぎもあった。
首相がヤジを飛ばして謝罪に追い込まれるのは、これが初めてではない。2月には当時の西川公也農水相を追及する民主党議員に対し、自席から「日教組(日本教職員組合)どうすんだ?」などと「不規則発言」。結局、その時も後になって「正確性を欠く発言を行ったことは遺憾」などと陳謝した。
前日には野党のヤジを批判
そもそも安倍首相が審議中のヤジをどう考えているのかはっきりしない。
5月27日の特別委員会では自身へのヤジに「静かに」と人差し指を口に当てて、
「議論の妨害はやめていただきたい。学校で習いませんでしたか」
と言ったばかりなのだ。
それだけに「早く質問しろよ!」発言には野党の反発は強い。民主党の枝野幸男幹事長は、
「ヤジを『けしからん』といった当人が昨日の今日ですから。政治家、総理大臣として以前に人としていかがなものか」
と批判し、さらなる謝罪を要求した。
過去には1日の中で自らへのヤジを批判する一方、質疑相手の発言中にヤジを飛ばしたこともある。14年7月の参院予算委員会で民主党の福山哲郎氏の質問に答弁している時に「ちゃんと答えて」とヤジが飛ぶと、
「大事なところだから黙って聞いていただきたい」
「今、丁寧に答えているんですから、少しは忍耐力を持って」
とイライラした様子でヤジを制した。
にもかかわらず直後、福山氏が質疑の中で「自民党のある議員が」と話すと、「名前を言わないと分からない」とヤジを飛ばした。福山氏から注意を受けると、隣の麻生太郎財務相と顔を見合わせ、苦笑いを浮かべていた。