安保法制がやっと国会で審議されだした。議論がかみ合わない、などと報道されている。安倍晋三首相は、集団的自衛権が侵略のリスクを減らすという。一方、民主党などは、集団的自衛権の行使は自衛隊のリスクを高めるとしている。
また、安倍首相が、侵略される事態になる可能性が少なくなると言うのに対し、民主党などは万が一不測の事態になったら自衛隊のリスクが高くなるといっている。これでは議論がかみ合わないはずだ。
防衛コストが安上がりに
あえて単純化して言えば、集団的自衛権を行使する場合、個別的自衛権の場合だけよりも、侵略される確率が50分の1から100分の1に下がるとしよう。ただし、万が一不測の事態になったら、集団的自衛権の行使でも個別的自衛権の行使でも同じく、自衛隊が被害を受ける確率は2分の1と考える。
これで、わかるだろう。安倍首相は50分の1から100分の1に下がることを言うのに、民主党は、万が一不測の事態になったら、個別的自衛権の場合には2分の1より少ないが、集団的自衛権の場合には2分の1と大きくなると主張する。リスクの段階が両者で異なっており、しかも、民主党の場合、個別的自衛権と集団的自衛権で確率が異なる、と合理性を欠いている。
集団的自衛権について、日本のマスコミでは、戦争に巻き込まれるという考え方が強い。国際関係論では、集団的自衛権のほうが、防衛コストが安上がりになり、戦争にまきこまれないというのが常識だ。
まず、コストでは、現在米軍の日本への防衛をすべて日本だけでの自主防衛で受ければ膨大なコストになることは明らかだ。いろいろな試算があるが、20兆円以上も必要ともいう。
マスコミの論調は、第2次世界大戦後に起きた紛争や軍事介入の多くは、集団的自衛権行使を口実に使われることが多いというものだ。