日本初の「春画」展が2015年9月19日から12月23日にかけ18歳未満入場禁止を条件に、都内の永青文庫で開催されることが決まった。計画ではイギリスの「大英博物館」で開催された直後の14年1月に予定していたが、国内で受け入れる美術館が見つからずに開催が1年半伸びた。
フランスを中心に欧米の芸術家たちに多大な影響を与えた「ジャポニズム」。浮世絵の中で春画は特に驚きをもって迎え入れられ、現在でもヨーロッパでは春画は芸術品として人気を博している。しかし、発祥の地日本では、長い間取り締りの対象とされタブー視されてきた。今回の永青文庫での開催でも苦情などを恐れたためか、スポンサーが1つも付いていない。
ゴッホやピカソ、マネらに影響を与える
春画は江戸時代の娯楽文化として発展し、性器を強調する形で男女の営みを描いた。庶民には版画、上流階級は肉筆画が流行した。明治になると公序良俗を乱すものとして公に出すことが禁止された。学術本はあるのだが、性器の部分などには暈しなどが入れられ出版されることになった。
永青文庫で行われる春画展の実行委員を務める国際日本文化研究センターの早川聞多名誉教授によれば、19世紀にヨーロッパで起きた「ジャポニズム」は浮世絵などが影響を及ぼしたと日本では知られているが、実は、浮世絵の中でも春画の影響が強いのだという。芸術作品として受け入れられていて、ゴッホやピカソ、マネ、ゴーギャンら、名だたる芸術家に影響を与えた。これまでも、フランス、イタリア、スペイン、ベルギーなどで展覧会を行ったが、年齢制限などは無く、先生が生徒を引率して訪れるなどいつも大盛況になっているという。
13年10月から14年1月にかけて3か月間に渡り、日英交流400年を記念しロンドンの「大英博物館」で春画展を開催したところ、入場者は約9万人で、日本円にして8000円で販売した図録8000部があっという間に売れた。入場者の55%が女性だったという。「大英博物館」での入場は「16歳未満は保護者同伴が必要」だった。実は、この直後に東京での日本初の春画展を計画していた。
実現できなかった背景には、春画展を受け入れる美術館が無かったことがある。ヨーロッパと違い、発祥の日本では春画に対する偏見が残っていて、開催すればクレームが来るのではないかと恐れ、断られ続けた。ロンドンでの開催も、日英交流400年記念行事にもかかわらず、外務省など日本の役人は誰も顔を出さず、日本のスポンサーもゼロだったという。
東京で開催できることになったのは細川護煕元首相が理事長を務める永青文庫を説得できたからで、細川元首相の決断によって実現した形だ。細川家伝来の春画も展示される予定になっている。
さて現在は展示しても大丈夫なのだろうか。