自動車大手のマツダがソーシャルメディアのフェイスブックでトヨタ自動車との業務提携を発表したところ、その直後から、一般のユーザーらからの書き込みが相次いでいる。
熱烈な「マツダファン」のようで、どうやらトヨタとの業務提携に、「軒先貸して、母屋までとられてしまう」ことを心配しているようだ。
「マツダらしさ、失くさないで...」
マツダはトヨタ自動車との業務提携について、「『クルマがもつ魅力をさらに高めていく』ことを念頭に、両社の経営資源の活用や、商品・技術の補完など、相互にシナジー効果を発揮しうる、継続性のある協力関係の構築に向けた覚書に調印した」と発表。2015年5月13日にフェイスブックに公開した。
トヨタの強みである燃料電池車(FCV)や、家庭の電源で充電できるプラグインハイブリッド(PHV)の技術などをマツダに提供。一方、マツダはトヨタに、独自の環境技術である「スカイアクティブ」と呼ぶ、高出力で低燃費のディーゼルエンジンやガソリンエンジンの技術供与を検討する。
互いに得意な技術やノウハウを結集。共同で技術開発や改良を進めることで、巨額の投資が必要になる環境性能の開発や製造や、自動ブレーキなどの先進的な安全技術の分野での負担を軽減するのが狙いだ。
今後、両社で組織する検討委員会を立ち上げ、具体的な業務提携の内容の合意を目指していく。マツダの小飼雅道社長は、「この協業により、さらなる『クルマの魅力向上』が実現でき、お客様にとっての真の価値の向上と広島のモノ造り力の向上にもつながることを期待しています」と語った。
これに対して、マツダのフェイスブックには、熱烈なファンがこんな声を寄せている。
「あくまでも業務提携。winwinの関係だと思います」
「お互いに切磋琢磨して、より良いクルマをつくってくれることを期待しよう」
「お互いの技を認めたんだ。素晴らしいことだと思う」
といった称賛の声があがる。
その半面、
「う~ん。生き残るためには仕方がないのかな」
「マツダはマツダの歩く道があるはず。これじゃあ世の中、どこのクルマを買っても乗っても一緒じゃないか!」
「技術を金で買うメーカーと、お金は無いが心が有るメーカーは何処で交われるのだろう...」
「T社にいいように使われるだけのように思うのは私だけ?」
「マツダらしさは失くさないでほしいですね」
「ファンを裏切るのだけはやめてください。わたしはいまのままのマツダでも大好きなんですよ」
と、マツダのよさが「失われてしまう」ことを心配する声は少なくない。
「具体的な内容はこれから一つひとつ、しっかり検討していきます」
今回のマツダとトヨタの提携は、あくまで業務提携で、資本提携には踏み込んでいない。とはいえ、書き込みの中には、
「マツダは今さらハイブリッドが必要かな? マツダだけは独立でいてほしかった」
といった、マツダが今にもトヨタに「飲み込まれてしまう」かのような声もある。
トヨタは売り上げ規模で9倍、営業利益で14倍近くもマツダを上回るのだから、熱烈な「マツダファン」が憂慮するのも無理はない。バブル経済崩壊後にマツダの経営が悪化して、米フォードが乗り込んできたときのことを思い出したファンもいるのかもしれない。
こうした心配の声に、マツダは「包括提携の覚書を交わしたところで、具体的な内容はこれから一つひとつ、しっかり検討していきます」と話している。
また、TIWの自動車アナリストの高田悟氏はマツダファンに「お行儀の悪い相手とは(提携を)やらないでしょうし、基本的にはwinwinの関係で進めると思いますよ」と話し、「なにより、トヨタがマツダの技術力を高く評価して認めたわけですから、マツダのブランド力も上がります」と、今回の業務提携はマツダにとってメリットが大きいとの見方を示した。
さらに、近年は海外の環境規制が厳しくなっている。マツダは2010年からトヨタにハイブリッド(HV)技術を供与してもらっているが、マツダの企業規模では燃料電池車(FCV)などの独自開発はむずかしいことがある。
一方、FCVの市場を拡大したいトヨタにとっても、マツダがFCVの開発に乗り出せば、デファクトスタンダード(事実上の標準)に近づくので、メリットは小さくないとの事情があるとみられている。