焼き鳥店の看板のデザインなどが酷似していると、焼き鳥チェーン大手の「鳥貴族」に損害賠償を求められている京都の外食チェーンが、今度は「丸源ラーメン」を運営する物語コーポレーションから訴えられた。
訴えられたのは、「熟成醤油の肉そばラーメン」の「にく次郎」を運営する、秀インターワンだ。
店員のユニフォームまで酷似している
全国に106か店の「丸源ラーメン」を運営する物語コーポレーションは2015年5月14日、「熟成醤油の肉そばラーメン」の「にく次郎」を運営する秀インターワンを相手どり、大阪地裁に不正競争行為差し止め請求の仮処分を申請した。
ラーメン店「にく次郎」が使っている「熟成醤油」の烙印に「肉そば」と書かれたのぼり、細い木材を垂直に等間隔に並べて格子状に配置した店舗の外観や提供しているラーメンのメニューに使用している「熟成醤油肉そば」の名称、さらには黒の半袖Tシャツと濃紺の前掛けという店員が着るユニフォームまでが、「丸源ラーメン」に酷似しているとし、それらの使用差し止めを求めた。
町にさまざまな飲食店が溢れるなか、店名が同じだったり、店舗の外観や看板、内装や店内の雰囲気がどことなく似ていたりすることはないわけではないが、「丸源ラーメン」と「にく次郎」は比べると、たしかによく似ている。
インターネットでは、ツイッターなどで両者の店舗やのぼりを比較する写真などが公開されていて、
「さすがに、これはダメだろ・・・」
「はっきり言って『にく次郎』のオリジナリティーZERO。この会社の『鳥次郎』も『鳥貴族』から訴えられてるし、何を考えてんだろうなぁ」
「バレないと思ったのかな・・・」
「偶然似るのには限度がある。『鳥次郎』『にく次郎』はおそらく確信犯じゃないかな」
「『鳥次郎』に『にく次郎』か、なんだか悪質だな。他にもパクりあんじゃねーの?」
と、「似ている」の声はかなり多い。
しかし、そんな中に、
「似てて、何か問題でもあるの。味はマネできないだろうし、所詮その程度の店だと思っていればいいじゃない」
など、寛容な声がないわけではない。
「丸源ラーメン」を運営する物語コーポレーションは、これまでも商品名の変更やのぼりの撤去などを求めたが受け入れてもらえなかったと経緯を説明。「外観などが似ていると、同じチェーンの店舗だと誤解するおそれがある」と主張している。
秀インターワン「担当者が終日会議で外出」
ラーメン店の「にく次郎」を運営する秀インターワンは、関西エリアを中心に、お好み焼きチェーンの「いっきゅうさん」や串揚げ・焼き肉専門店の「串虎」、個室和食の「京ほのか」や「ゆずの家」、「灯花」などを展開する外食チェーン。
その1つ、焼き鳥専門店の「鳥次郎」をめぐっては、2015年4月に焼き鳥店チェーン大手の「鳥貴族」から、鶏をかたどった「鳥」の文字などをデザインした看板やキャラクター、メニュー、店の内装や店員のユニフォームなどが似ていると、それらの使用差し止めと6050万円の損害賠償を求めて、大阪地裁に訴えられている。
「鳥次郎」と「鳥貴族」が、同じ企業が運営する焼き鳥店チェーンだと思っていた人は少なくなかったようだが、秀インターワンは裁判で「(看板デザイン、色彩などは)あきらかに異なっている」と、真っ向から反論している。
じつは、物語コーポレーションも「丸源ラーメン」のほかに、鉄板焼き・お好み焼き店の「お好み焼き本舗」や焼き肉チェーンの「焼肉きんぐ」、寿司・しゃぶしゃぶの「ゆず庵」などのブランドを展開している。こうしたブランドの店舗の外観やロゴマークの一部も、他社と似ているのでは、といった指摘もあるようだ。
今回、仮処分の申請に踏み切った理由を、物語コーポレーションは「フランチャイズ本部として、加盟店の皆さまに御愛顧いただいている『丸源ラーメン』のブランドを守るためです」(太田幹彦・広報室長)と話す。
多くのフランチャイジー(FC)を抱えている外食チェーンは、商号や商標などの使用や自身が開発した商品・サービスを提供する権利、営業ノウハウなどを提供することで、FCからの対価(ロイヤリティー)を得ている。
つまり、簡単にマネされては対価を払ってくれているFCに顔向けできないばかりか、FCとの信頼関係が崩れてしまいかねず、経営の根幹にかかわるというわけだ。
一方、「にく次郎」の秀インターワンは、担当者が終日会議で外出しているとのことだった。