小売業界で総合スーパーの苦戦が続くなか、2014年4月の消費税増税をものともせずに顧客を引き寄せる専門店の快調ぶりが際立っている。格安商品のみに頼らず、付加価値のある商品を認められているのが特徴だ。
海外戦略で成果を挙げている企業もあり、日本の小売業界の底力を見せているとも言えそうだ。
格安商品を充実させる一方、高価格帯も扱って品揃えを増やす
かつての小売業の雄、ダイエーが赤字続きでイオングループ内で「解体」され、店の名前としても2019年2月末をめどに消滅するに至ったことは言うに及ばず、2015年2月期に最終赤字に陥ったイトーヨーカ堂や東海地方が地盤のユニーなど、総合スーパーの落日はもはや覆い隠せないものとなっている。
ただ、スーパーと言っても、食品が主力の専門店とも言える「食品スーパー」は奮闘している。例えば、滋賀県彦根市に本社を置き、関西、東海、北陸に店舗網を持つ中堅の平和堂。2015年2月期の純利益は前期比8%増の84億円と過去最高を更新した。
平和堂は古い店舗では衣料品なども扱い、かつての「総合スーパー色」も残すものの、新しい店舗を中心に食品スーパー色が濃い。全店舗とも鮮魚などの生鮮食品のジャンルにおいて、格安商品を充実させる一方、高価格帯の食品もかなり扱って品揃えを増やすことで、節約志向の消費者と舌の肥えた消費者との両方をつかまえることに成功している。
平和堂と同様に総合スーパーから特色ある食品スーパーに衣替えしながら、業績を改善させているのが、広島市に本社を置いて中国・九州地方を地盤とするイズミだ。やはり格安商品を導入する一方で、高品質で小容量の高齢者向け商品がヒット。2015年2月期の営業利益は前期比4%増の303億円と、過去最高を更新。2016年2月期も増収営業増益を見込む。
円安の逆風をはねかえす
快調な専門店と言えば、日本経済新聞終面の「私の履歴書」で4月、トップの赤裸々な記述が話題を呼んだ家具チェーンのニトリは外せない。2015年2月期の純利益は言わずと知れた16年連続での過去最高を更新し、前期比8%増の414億円。ベトナムや中国で生産した商品を国内で輸入販売するビジネスモデルのニトリにとって、黒田日銀の金融緩和による円安という強烈な逆風が続いたものの、それまでより客単価を上げた付加価値商品政策が功を奏した。顧客も単価アップを受け入れた。
似鳥昭雄社長は円安について「必死で考える必要に迫られる社員が成長するチャンス」とまで言う。2016年2月期もさらに増益を続ける見通しだ。
カジュアルシューズを中心とする靴販売のABCマートも、2016年2月期の純利益が前期比6%増の258億円になるとして、3年連続で過去最高を更新する見通しを示している。ABCマートの成長を支えるのは「お値打ち感」を支持する日本人の消費者だが、中国人など訪日外国人の購買力にも支えられているという。もともと「メイドインチャイナ」が多く円安が逆風だが、「信用できる日本の店舗で買いたい」との中国人独特の心理に助けられているという。
専門店の真打ちと言えば雑貨店「無印良品」を展開する良品計画だ。2015年2月期は経常利益が前期比15%増の266億円と3期連続で過去最高を更新。もともと格安商品はほとんどないが、より付加価値の高い商品に注力する戦略が消費者に支持された。独特なデザインは海外でも受けており、今後米国や中国などで出店を加速する方針。日本発の雑貨ブランドとしての飛躍が期待されている。