日本研究者187人の慰安婦問題声明は日本批判だけではなかった 実は、中韓にも「民族主義的暴言」と厳しい評価

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   欧米を中心とする日本研究者187人が戦後70年の節目に発表した声明を、韓国メディアが「慰安婦問題の解決を促した」などと報じている。声明の内容の多くがいわゆる従軍慰安婦問題に関するもので、総じて日本側に厳しい内容だが、欧米メディアで頻繁に使われる「性奴隷」(sex slaves)という単語が登場しないなど、日本側に対する配慮もうかがえる。

   一連の問題が「韓国と中国の民族主義的な暴言」によってもゆがめられてきたとも指摘。日本側にすべての責任があるとする一般的な韓国世論とも一線を画している。

  • 韓国のKBSテレビは、声明の内容を「数多くの女性が自分の意志に反して捕らえられ、恐ろしい野蛮な行為の犠牲となった」などと伝えた
    韓国のKBSテレビは、声明の内容を「数多くの女性が自分の意志に反して捕らえられ、恐ろしい野蛮な行為の犠牲となった」などと伝えた
  • 韓国のKBSテレビは、声明の内容を「数多くの女性が自分の意志に反して捕らえられ、恐ろしい野蛮な行為の犠牲となった」などと伝えた

問題が民族主義に利用されれば「被害者自身の尊厳をさらに侮辱」

   声明は「日本の歴史家を支持する声明」(Open Letter in Support of Historians in Japan)と題して2015年5月5日(米国時間)に日英2か国語で公表され、ベストセラー「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の著者として知られるハーバード大学のエズラ・ヴォーゲル名誉教授、マサチューセッツ工科大学のジョン・ダワー教授ら著名な学者187人が名を連ねた。

   その中では、戦後70年の日本の歩みを「全てが世界の祝福に値する」と高く評価しながらも、「歴史解釈の問題」、とりわけ「いわゆる『慰安婦』制度の問題」が、祝福を受けるにあたっての障害になっていると指摘。その直後に、韓国や中国の責任についても言及した。

「この問題は、日本だけでなく、韓国と中国の民族主義的な暴言によっても、あまりにゆがめられてきました」

   その上で、中韓の国内的な事情で元慰安婦女性の人権がさらに侵害されている可能性にも言及した。

「元『慰安婦』の被害者としての苦しみがその国の民族主義的な目的のために利用されるとすれば、それは問題の国際的解決をより難しくするのみならず、被害者自身の尊厳をさらに侮辱することにもなります」

慰安婦の証言内容は「さまざまで、記憶もそれ自体は一貫性をもっていません」

   声明では慰安婦という単語は、すべて「慰安婦」と鍵括弧でくくられ、「性奴隷」という単語は登場しない。その数についても「恐らく、永久に正確な数字が確定されることはない」し、その証言の内容についても「さまざまで、記憶もそれ自体は一貫性をもっていません」などと一定の条件を付けるなど、日本側にも配慮されていると言える。

   ただ、こういった数や記憶のあいまいさに関する議論は枝葉末節だと受け止められている模様で、全体として過去の日本側の責任を指摘していると言える。

「日本帝国とその戦場となった地域において、女性たちがその尊厳を奪われたという歴史の事実を変えることはできません」
「大勢の女性が自己の意思に反して拘束され、恐ろしい暴力にさらされたことは、既に資料と証言が明らかにしている通り」

   終盤には、2015年という年を、

「日本政府が言葉と行動において、過去の植民地支配と戦時における侵略の問題に立ち向かい、その指導力を見せる絶好の機会」

と位置付け、安倍首相の4月の米議会演説では、

「人権という普遍的価値、人間の安全保障の重要性、そして他国に与えた苦しみを直視する必要性」

について触れたことを評価しながら、具体的な行動を求めた。

「私たちはこうした気持ちを賞賛し、その一つ一つに基づいて大胆に行動することを首相に期待してやみません」

   ただ、韓国メディアはこういった点には触れず、

「米国訪問を正常に終えたと自己評価している安倍首相に一撃を与えるとみられる」(朝鮮日報)
「世界の著名な歴史学者187人が日本の慰安婦問題歪曲の試みを厳しく非難した。安倍首相の真の謝罪も求めた」(KBSニュース)

などと単純に日本側を非難するにとどまっている。

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