自民党は2015年4月14日、財務金融部会などの合同会議を開き、お酒の過度な安売りを規制する酒税法などの改正案を、議員立法で今国会に提出する方針を了承した。公明党なども賛成している。
大規模量販店の安売り攻勢を受け、疲弊している小規模酒販店を守るのが狙いだ。消費者にとっては負担増も予想され、反発を招きそうだ。
「公正な取引基準」を定める
改正案は、酒類の製造や販売に関する「公正な取引基準」を定め、従わない業者を公表したり、免許を取り消したりできるようにする。基準の詳細は今後詰める。また原則として酒類の売り場ごとに選任する「酒類販売管理者」に、未成年者への販売防止研修を3年ごとに受講することを義務化する。
背景には、小規模酒販店の苦境がある。「町の酒屋さん」が全体の販売業者に占める割合は、1995年度は約8割を占めたが、2012年度は約3割に減少した。
1990年代後半以降の相次ぐ規制緩和が要因だ。酒販店ごとの距離や、地域の人口に関係なく酒販免許を取得できるようになり、それまで酒を扱っていなかったスーパーやコンビニエンスストアの一部が相次いで参入。ホームセンターや家電量販店などもお酒を売るようになった。経営者の高齢化、後継者不足といった、小規模小売店共通の悩みも抱えている。
「安売りは企業努力によるも」と反発も
スーパーや酒の量販店は、量をさばけるのが最大の武器。メーカーとの価格交渉を有利に進めることができ、「小規模酒販店の仕入れ価格よりも、大規模量販店の小売価格の方が安い」(東京都内の酒屋店主)という状況もある。ビールやチューハイなど単価の低い商品を、小規模酒販店で買う人は少なくなっている。
国税庁は2006年、酒類の「不当廉売」を規制し、公正な取引を促す指針を示した。業者を調査・指導してきたが、法的な強制力や罰則規制はないため、小規模酒販店から規制強化を求める声が出ていた。
一方、大規模量販店からは「安売りは企業努力によるもので、行政が口を出すのはおかしい」と反発の声が高まりそうだ。そもそも、規制の対象となる「過度な安売り」の線引きは極めて難しい。実際に規制が強化されれば、量販店側が自主規制し、販売価格の上昇を招く可能性がある。そうなれば、価格重視の消費者から敬遠され、酒類市場の縮小に拍車をかけかねない。
小規模酒販店からも「仮に規制が強化されたとしても、大手の価格の方が相対的に安いという状況は変わらない」との声が漏れる。価格で大手と勝負するのは困難なため、店主の豊富な商品知識など、大手にはまねのできない価格以外の付加価値で勝負すべきだとの意見も根強い。
「問題点が多い」と指摘される今回の改正案。国会でどのような議論が交わされるのか、注目が集まりそうだ。