「またあいつらか」――ネット上のあちらこちらで呆れる声が聞かれた。米グーグルの提供する地図検索サービス「グーグルマップ」で2015年4月21日、多くの書き換えが発見された件についてだ。
実行したのは、過去に何度も同じような手口でハッキングを繰り返してきた集団と見られる。
米ケネディ宇宙センターは「恒心教宇宙開発局」
今回の書き換えでは、東京都千代田区の皇居に「こ恒心教総本山」、広島市の原爆ドームに「恒心教 核実験場」、創価学会本部の場所に「恒心教 創価学会支部」といった表示が見つかった。
国内のみならず海外の地名も書き換えられている。例えば、米ケネディ宇宙センターは「恒心教宇宙開発局」、15年1月に襲撃テロ事件のあった仏新聞社シャルリー・エブド本社は「恒心教パリ総合サティアン」と表示されている。なお、いずれの表示も現在は消去されている。
ただ、ほとんどの大手メディアは「恒心」について言及を避けた。21日付け朝日新聞電子版は「ネット上の掲示板などでつくられた架空の宗教だとみられる」と伝えたが、これは正確ではないようだ。
唯一、21日付け日テレニュース24が「恒心」の謎に迫り、ITジャーナリスト・三上洋氏の「恒心教とはですね、この1、2年インターネット上でいたずらしたり、悪さをするグループとして名前が出てきた。アンチだったり、いたずらだったりをしているのが実際です」とのコメントを掲載している。
グループが「恒心教」と名乗っていたのは確かだが、由来は東京都内に実在する法律事務所名からきているという。事務所所属のある弁護士はネット上で名誉棄損を受けた人の被害回復を専門としており、2ちゃんねる「なんでも実況J」板で度々話題に上っていた。
「深い意味は無いと思いますよ」「暇つぶしですよね」
ITジャーナリストの井上トシユキさんは「恒心」について「2ちゃんねるでのトラブルを解決している法律事務所だと聞きますが、深い意味は無いと思いますよ」「単に『ネタ』『スラング』として使われているだけで、(書き換えを)やっている本人も『システムダウンを狙っている』ということはないと思います。暇つぶしですよね」と語った。
ただ、書き換えた人物が専門知識を有しているのは間違いないようで、「IT関係職に就いているのでは」という。「仕事中の待ち時間で、そういったことをやるというのは考えられます」と話した。
さらに、井上さんは今回の書き換えについて「業務妨害ということで、(グーグルが)2ちゃんねるやプロバイダーに発信者情報の開示を求めるんじゃないでしょうか」と、厳しく対処される可能性を示唆した。
一方のグーグルは取材に対し、「Googleマップでは、ユーザーから提供された地図上の表記内容に間違いや、ポリシー違反があった場合、対象を削除する等の対応を行っています」とのみ回答した。