ヤラセ疑惑が持ち上がっている報道番組「クローズアップ現代」について、NHKの調査委員会は2015年4月9日、中間報告を発表した。一部放送内容については「裏付けが不十分であった」と認めたが、「ヤラセ指示」については「主張は大きく食い違っている」とするにとどめた。
報告書の中で明らかになったのは、記者が撮影まで出演者に1度も会っていなかったことなど、番組制作での取材のずさんさだ。
ブローカーであるか裏付けせず
疑惑がもたれているのは、2014年4月に関西ローカル「かんさい熱視線」、同年5月に「クローズアップ現代」で放送された「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」だ。ブローカーとされた男性A氏が記者から収録時に演技をするよう求められた、などと告白し、訂正を求めている。
中間報告では、撮影場所となったビルの1室をブローカーの「活動拠点」としていたことについて、「誤りであり、裏付けが不十分であった」と認めた。その一方、A氏が「ブローカー役をやらされた」と話していることについては、「記者は『演技の依頼はしていない』と一貫して否定している」として、両者に食い違いがあるとするにとどめた。
また今回の報告で、記者のずさんな取材が浮き彫りになった。記者は撮影当日までA氏と一度も会っていなかったというのだ。直接連絡も取っておらず、撮影を打診するまでのやり取りは、記者にA氏を紹介したB氏を通じて行っていたという。
争点となっている、A氏がブローカーであるか否かについても裏付けは不十分だ。中間報告は「記者は、A氏が『出家詐欺』の手口を詳細に語り、自らを『われわれブローカー』と称したことなどから、ブローカーに間違いないと思った」とし、A氏の発言だけで判断したと読み取れる。しかしA氏は話した内容は知人から聞いたものだとして、ブローカーではないと否定している。
元NHK記者「私の経験ではまったく考えられない」
一連の取材、番組制作過程について元NHK記者の手嶋龍一さんは4月9日、出演した「ミヤネ屋」(日本テレビ系)で、
「裏を取らずに放送するのは、私の経験ではまったく考えられない」
と批判した。撮影までに一度も会っていなかったことについては、「(事前に面会することは)世界のどこでも行われていること」と指摘。「十分な取材だったかと問われると、十分ではなかったと言わざるをえない」と語気を強めた。
また読売テレビ報道局解説副委員長の春川正明さんは「業界全体として、取材に気を配っているのに、まだこんな取材をしているのか」とあきれていた。