東証2部に上場する、調理用家電大手の象印マホービンの株価が急騰している。
背景には中国人観光客らの「爆買い」があるとされ、炊飯ジャーやステンレス魔法瓶などが売れに売れている。
減益予想が一転 「爆買い」駆け込み需要並みの効果
春節(旧正月)に、東京・銀座や秋葉原の免税店や家電量販店に大型バスで乗りつけ、大量の買い物をして帰っていった中国人観光客の「爆買い」。その凄まじさが、株式市場にも伝播してきた。
象印マホービンの株価は2015年3月31日、前日比300円のストップ高。1419円で引けた。25日(1177円)に付けた年初来高値をさらに更新し、安値を付けた14年3月20日(318円)と比べるとじつに4.4倍にも膨らんだ。
1か月前の春節(2月18日~24日)時には800円前後で推移。そのときと比べても1.8倍近くも急騰したことになる。
買い材料になったのは、3月30日の引け後に発表した2015年11月期(通期)の連結業績予想の上方修正にある。売上高は従来予想の780億円から845億円(前期比10.0%増)に、営業利益は39億円から71億円(20.8%増)に引き上げられた。連結純利益は26億円から47億円(25%増)になる見通しで、減益予想から一転して増益に。しかも3期ぶりに過去最高益を更新する。
好調な要因の一つは海外市場。象印マホービンは円安の影響について、「1円円安になると約9000万円のマイナスになります」というものの、海外では中国や台湾向けに炊飯ジャーやステンレス魔法瓶の販売が大きく伸びたことが寄与。円安が逆に収益押し上げ効果となった。
また、利益率の高い圧力IH炊飯ジャーの販売好調が大幅増益に貢献。「国内で組み立てて海外で販売する、高級タイプの炊飯ジャーなどは『JAPAN Quality』といって、とても好評のようです」と話している。
さらには、中国人観光客らの「爆買い」がある。業績予想の上方修正について、象印は「国内では消費増税による需要の冷え込みなどで厳しい経営環境が続くとみていましたが、訪日外国人のインバウンド消費の下支えなどもあって、駆け込み需要で好調だった前年同期とほぼ同じ水準の売上高を維持できました」という。
つまり、中国人の「爆買い」は消費増税による駆け込み需要と同じか、それを上回る「効果」をもたらしたことになるわけだ。
高級タイプから売れてゆく
中国人観光客らに人気の製品は、南部鉄器を使った「極め炊き」シリーズの炊飯ジャー。象印マホービンは「炊飯ジャーでは2種類のおかゆがつくれる製品がとくに人気。日本の炊飯ジャーは高いものほどおいしいというイメージがあるようで、高級タイプから売れていきます」と話す。なかには量販店の店頭で、一番高い製品を「指名買い」する人もいるらしい。
また魔法瓶は、お茶をそのまま飲める「マイボトル」タイプのステンレス魔法瓶が人気。「中国での事業展開によって認知度が上がったことが功を奏しているようです」とみている。
いずれも品質のよさに加えて、日本では中国国内の3分の1程度の価格で購入できることもあり、おみやげとして「まとめ買い」する人が後を絶たない。
象印によると、電圧などを海外仕様にした免税品を含めた訪日外国人向けの売り上げは、第1四半期(14年11月21日~15年2月20日)で推定約20億円にのぼる。
インターネットには、
「中国では自宅やオフィスで沸かしたお茶を持ち歩くのが習慣で、魔法瓶は象さんの品質のよさが抜けているそうだ」
「行きつけの家電量販店で、象印のマホービン売り場に中国人観光客が群がっているのをみて『すげー』って驚いた時点で株買っとけばよかったんですよ」
「チャイナマネー、スゲーな」
「象さんの魔法瓶の棚は空っぽ。炊飯器は競争メーカーが多いけど、魔法瓶は盤石」
「家電量販店で、炊飯ジャー以上にタイガーや象印マホービンが飛ぶように売れている。今年の業績は昨年以上に伸びる、株価も伸びる...」
といった声が寄せられている。
円安傾向は今後も続くとみられ、それに連れて訪日外国人客も増えそう。株式市場では象印以外でも「訪日外国人」に関連した銘柄の上昇ぶり目立ち、ホットなテーマとなっていることは間違いないようだ。