戦後の日本経済を襲った猛烈なインフレーションを抑える目的で施行された、といわれる「預金封鎖」が再び発動されるのではないか――。そんな議論がまことしやかに広がってきた。
なにしろ、国の借金は2014年12月末時点で約1030兆円。国民一人あたり811万円に達し、国内総生産(GDP)に占める割合は231.9%にまで膨らんだ。対GDP比はすでに、「預金封鎖」が施行される前(1944年度末)の204%をはるかに超えているのだ。
預金封鎖の狙いは「財産税だった」
「預金封鎖」が話題になっている。
NHK「ニュースウオッチ9」(2015年2月16日放送)では、預金封鎖によって起った国民生活の激変ぶりを、大阪市立大学名誉教授の林直道さん(91)が証言。さらにNHKが政府への情報公開請求によって入手した当時の証言記録をもとに、預金封鎖の「真の目的」に迫るという内容だった。
政府は戦時中、国民に国債の購入を促して大量に発行した。その結果、国の借金は急増。終戦前の1944(昭和19)年度末には対GDP比204%にまで膨らんだ。
敗戦直後、物資や食料が不足している日本を猛烈なインフレが襲い、国の財政は危機的状況に瀕した。政府は借金の返済原資を確保しようと、国民がもつ10万円超の預貯金のほか、家屋や田畑、株式など幅広い資産に最高90%を課税した。それが財産税だ。敗戦による国の借金を国民に負わせようとしたわけだ。
突然の通告で国民生活はどうなったのか――。当時22歳の学生だった林直道さん(91)は、預金封鎖でお金が引き出せなくなり、手持ちのお金が不足したことで、ただでさえ不足していた食料がますます手に入りにくくなり、川の堤防に生えている草をゆがいて、わずかなご飯とともに食べたこともあったと語った。
一方、預金封鎖は当初、貧困にあえぐ国民を救済するため、流通する貨幣の量を強制的に減らしてインフレを抑えるのが目的とされてきた。加えて、番組では預金封鎖の「もうひとつの狙い」が、「財産税を課税するためには国民の資産を把握する必要があった」と解説している。
つまり預金封鎖は、銀行の預金を一定期間「凍結」して資産を把握。それに課税する措置ということのようだ。
この放送後、インターネットではさまざまな議論を呼んでいる。提言型ニュースサイトのBLOGOSには、金融アナリストの久保田博幸氏が「預金封鎖と政府債務の削減」と題して取り上げ、また米国の投資顧問会社に勤める広瀬隆雄氏は「唐突感」があるとしながらも、「キターッ NHK、預金封鎖を語る(笑)」と題して考察した。
インターネットの書き込みにも、
「自分達(政治家、官僚)の失敗のツケを国民に押し付けるつもりだな!」
「公共事業もうやめぇ。海外に金をばらまくのもやめや。他人の金をあてにするな」
「ん、、、消費税を上げるためのプロパガンダか? 」
「銀行から預金が引き出せなくなるとか最悪だね。この先そんなことが起こってもおかしくないのかぁ」
「歴史は繰り返すと言いますからね」
といった声が寄せられている。