元経済産業省キャリア官僚の古賀茂明氏がテレビ朝日の「報道ステーション」のコメンテーターを事実上降板する見通しになったことについて、2015年2月25日に東京・有楽町の日本外国特派員協会で開いた会見で、報道局長や経営陣の意向がその背景にあると指摘した。
ただ、古賀氏の説明によると、「降板」を明示的にテレビ朝日側から伝えられた訳ではなく、4月以降の出演の打診がなくなったことを古賀氏が「降板」だと受け止めているようだ。
菅官房長官、「声明」呼びかけた人に皮肉交じりに強い不快感
記者会見は、メディアに政府批判を自粛する動きが広がっていることを懸念する「翼賛体制の構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明」をアピールしようと開かれた。
古賀氏は1月23日の「報ステ」で、過激派組織「イスラム国」による人質事件への日本政府の対応を「I am not Abe」などと批判し、波紋が広がっている。中には「官邸の逆鱗に触れた」との見方もある。
例えば、菅義偉官房長官は2月24日午後の会見で声明についてコメントを求められ、
「つい先日、私、この運動をやっている方がテレビ出て発言してましたけど、あたかもISIL(「イスラム国」)の事件に対してですね、政府を批判してましたけど、人命に本当に危険が迫るようなことをですね、また、あたかも見てきたようなですね、全く事実と異なることを、テレビ局で堂々と延々と発言していました。まあ、そういうことを見ても、日本というのは、まさに自由がしっかり保証されているんじゃないでしょうかね?はき違えているのもあるだろうと思いますけど」
と、皮肉交じりに強い不快感を示している。「この運動をやっている方」のテレビ出演がどれを指すかは必ずしも明らかではないが、古賀氏の「I am not Abe」発言を指している可能性も指摘されている。
これまでは「具体的な日程は2~3か月先まで決めましょう」だったが...
古賀氏は会見で、
「正確に言うと、私とテレビ朝日の間で特に『年に何回出演してください』という契約があるわけではない。ですから、テレビ朝日の立場からすれば『その時でお願いしているので、別にクビにするとかそういうものではない』ということ」
などと明示的に降板を言い渡された訳ではないことを説明。これまでの出演では、「月1回」をベースにしながら、「具体的な日程は2~3か月先まで決めましょう」といった具合にプロデューサーとスケジュールを調整していた。だが、4月以降の出演スケジュールは白紙で、古賀氏はその理由をこのように推測する。
「去年(2014年)から報道局長が私の出演をいやがっているという話があった、ということは聞いていたが、この間の1月23日の発言以降は『4月以降は絶対に出すな』という厳命が下っているという風に...(聞いている)。私は報道局長から直接は言われていないので直接聞いてみたいと思う。それはトップの意向を反映したものだと私は理解している」
最後の「報ステ」出演は3月27日?
古賀氏はすでに3月6日と27日の出演が決まっており、
「さすがにそれをキャンセルすると、おそらく皆さんから大きな批判が出るだろうということで、4月以降が決まっていなかったので、4月以降は出演禁止、ということだと思う」
と述べた。
古賀氏は2月17日の時点で、J-CASTニュースの取材に対して、自らが「降板」する見通しを明らかにしている。その時点でテレビ朝日は「人事や出演者について、決定していることはございません」と説明していた。
会見では、声明を呼びかけているジャーナリストの今井一(はじめ)さんが、現役のテレビコメンテーター3人から
「この声明に賛同して署名したいけれども、そうすると3~4月の番組改編の時に職、ポストを失う。そうすると収入が一気に減ってしまう。その可能性が強いので署名ができない」
といった連絡を受けたことを明かし、危機感を訴えていた。