NHK訴訟では視聴者に対する賠償請求は棄却
メディアに対する大規模訴訟はこれが初めてではなく、日本による台湾統治に焦点を当てたNHKスペシャル「シリーズJAPANデビュー」の初回「アジアの『一等国』」をめぐる09年に起きた訴訟が有名だ。
この訴訟では、09年6月に「放送法などに反した番組を見たことで精神的苦痛を受けた」などとして約150人の台湾人を含む約8400人が、約8400万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴。同10月には、番組で取り上げられた先住民族パイワン族の出演者を含む約1900人が2次提訴し、原告数は約1万300人、請求総額は約1億1000万円に膨らんだ。
12年12月の1審判決では原告が全面的に敗訴。13年1月には原告42人が控訴し、13年11月の高裁判決ではパイワン族の女性に100万円の支払いを命じた。
ただ、視聴者として原告になった人については、
「さまざまな立場の人たちへの十分な配慮もないまま、先入観に基づいて本件番組を制作し、放送してしまって被控訴人(編注:NHK)に対して損害賠償を請求したいという思いは理解できないわけではないが」
と一定の理解を示しながら、法的責任については、
「個々の具体的な権利を侵害するものでない限り、いわば報道のマナー違反にとどまるべき」
として認めていない。
NHKは高裁判決を不服として13年12月に上告し、係争中だ。今回の朝日新聞に対する訴訟も長期化する可能性が高い。