いわゆる従軍慰安婦が済州島で多数強制連行されたとする「吉田証言」に基づく誤報を朝日新聞が30年以上取り消さなかった問題で、「日本国及び日本国民の国際的評価は著しく低下」したなどとする訴訟が相次いで起こされている。いずれも謝罪広告の掲載と原告に対する慰謝料の支払いを求めており、多いものでは原告数は2万人を超える見通しだ。
過去にもメディアに対する大規模訴訟は起きており、09年には、NHKの番組をめぐって原告1万人が損害賠償を求めて提訴し、係争中だ。今回の訴訟の請求額はNHK訴訟の2倍程度になりそうだ。ただ、NHK訴訟では、1、2審ともに一般視聴者に対する賠償請求は退けられており、今回の朝日新聞に対する訴訟でも、訴えが認められるかは不明だ。
在米日本人ら約2000人が、主要米紙への謝罪広告掲載などを求める
上智大学の渡部昇一名誉教授を原告団長とする約8700人は2015年1月26日、原告1人あたり1万円の慰謝料と謝罪広告の掲載を求めて提訴した。訴状によると、
「朝日新聞の本件一連の虚報により、日本国及び日本国民の国際的評価は著しく低下し、原告らを含む日本国民の国民的人格権・名誉権は著しく毀損せしめられた」
というのがその理由だ。
「朝日新聞を糺(ただ)す国民会議」を名乗る団体が原告の事務局を担当しており、原告に加わるために必要な「訴訟委任状」の数は2月14日に2万通を超えた。2月下旬にも2次提訴に踏み切る予定で、原告数が2万人を超える異例の訴訟となりそうだ。
2月23日午後には「国民会議」の加瀬英明・代表呼びかけ人と水島総事務局長が東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見予定だ。
これとは別に、2月18日には在米日本人ら約2000人が、主要米紙への謝罪広告掲載と原告1人あたり100万円の慰謝料を求めて提訴。この訴訟でも、朝日新聞の記事で慰安婦問題に関する誤った事実関係が世界に広がったと主張。在米韓国系団体がカリフォルニア州グレンデール市に慰安婦像を建立するなどして誤った認識が「定着」したとしている。
これ以外にも、2月9日には「朝日新聞を正す会」を名乗る会メンバー約400人が、誤報の検証が遅れたことで「読者が真実を知る権利を侵害された」として原告1人あたり1万円を求める訴訟を起こしている。