産経新聞掲載のコラムに対し、「アパルトヘイトを許容している」と抗議も出ている問題で、コラムを書いた作家の曽野綾子氏(83)が2015年2月17日、評論家・荻上チキ氏(33)のインタビューに応じた。
インタビューの模様は、同日夜放送のラジオ番組「荻上チキ・Session-22」(TBS系)で紹介された。その中で曽野氏は「差別じゃない、区別です」と強調し、抗議に反論した。
政策や法律による管理は「考えられない」
曽野氏は11日付朝刊のコラムで、労働移民を条件付きで受け入れることを提案する中、「もう20~30年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」などと書いた。
労働移民の受け入れという文脈で、アパルトヘイトが行われていた南アの例を出しつつ「分けて住む方がいい」と主張したことは「人種差別的」とも受け取られた。海外メディアも相次ぎ報じ、南アフリカ駐日大使が「アパルトヘイトを許容し、美化した」と抗議するなどして波紋を広げている。
だが当の曽野氏は、自身の意図とは異なる受け取られ方をしていることに困惑しているようだ。荻上氏によるインタビューでは「これは差別じゃない、区別です」と何度も繰り返した。
その上で、曽野氏はリトル東京を例に出した。「分離して、そこで独自の生活を作っていく便利さがある」と説明し、他国にいながらにして独自の食べ物が手に入るメリットを挙げた。
荻上氏から「国の政策や法律上で区分けをすべきとの主張ではないのか」と質問を受けると、「そんなこと誰が語りますか、この時代に。もう今、世界的にゲットーみたいな考え方って私、考えられないですけどね」と語気を強めて否定する。曽野氏の弁によれば、「分けて住む」という発言は国が強制するものではなく、自発的にできる「外国人街」のようなものをイメージしてのものだったようだ。
「まずい文章っていうのは『下手くそ』って意味でね」
インタビュー音声の放送後、荻上氏は「本人の中では本気で『差別じゃない。このコラムは差別じゃない自分が書いたんだから、そういう問題はないはずだ』っていう形になっている」と分析した。
しかし、本人は意図しなかったにせよ、海外を含めた多くの人々には異なる読まれ方をしてしまっているのが現状だ。英語圏では「安倍首相の元アドバイザー」などと報じられているだけに影響も懸念されている。それでも曽野氏は抗議が来ている理由について「全く分かりません」と訴える。
「まずい文章だって言われれば、そうかもしれないなっていうことは言えますけど。まずい文章っていうのは『下手くそ』って意味でね。『しまったことを書いた』って意味じゃないんです」
と本人なりの反省点はあるようだが、撤回の意向はないとのことだった。
インタビューでは、議論の元となっている「アパルトヘイト」の問題点ついても聞かれていた。しかし「(施行中の様子を)見たことがないから、全く分からない。私が南アに行ったときには崩れてましたから知らなかった。旅行者でしたしね」として、それ以上の言及を避けた。