子供の性被害が増えているとして、青少年健全育成条例が全国で唯一ない長野県が、淫行処罰規定などに限定した条例制定の検討を始めた。「少女と遊ぶなら長野」という書き込みがネット上で横行していると一部で報道されたが、実態はどうなっているのか。
条例がなかったために検挙できなかったケースとして、長野県警の山崎晃義本部長は、2014年の9月定例県議会で、13年1月から16件19人の子供の性被害があったと明かした。
規定がないため、19人の性被害を立件できず
例えば、県内の女子高生(17)のケースでは、県外の40代男性が、女子高生が知人の娘であることを利用してしつこく食事に誘い、それをきっかけに性行為までした。女子高生は、嫌だったものの、「知人だし断れない」と思い、仕方なく求めに応じたという。しかし、被害に悩んで母親にその後相談したところ、母親が警察に連絡して、女子高生への淫行が発覚した。
このほか、女子中学生(15)のケースとして、県内の妻子ある40代男性がラインで知り合った後、女子中学生を言葉巧みに誘い出したこともあったという。
これらのケースは、子供に金品が与えられていないため、児童買春・児童ポルノ禁止法では処罰できない。さらに、子供に影響力がある立場を利用したともされず、児童福祉法違反も適用できなかった。つまり、淫行処罰規定がある青少年健全育成条例がなかったために、罪に問えなかったというわけだ。
性被害に遭った19人は、高校生11人、中学生6人、無職2人で、いずれも少女だった。このうち、SNSなどネット上で知り合ったケースが、11件14人に上った。
「10代の女の子と遊びたいなら、長野へ行けばいい。警察に捕まらないから」
ネタの可能性はあるものの、産経新聞の15年1月12日付記事によると、ネット上ではこうした書き込みが横行しているという。そのうえで、記事では、県がようやく淫行処罰を規定する条例制定の検討を始めたことも紹介した。